2022 年 28 巻 p. 122-139
本稿では,国内ではあまり読まれていないシュナイバーグの晩年の論考や,生産の踏み車論とエコロジカル近代化論の対話と互いの歩み寄りの過程の分析により,これら2つの理論が“相補的”な関係にあることを示す。そして,この関係に基づいて,原因論的な分析モデルとして「生産の踏み車モデル」(政治経済モデル)を用いると同時に,解決論的なフレームとして「エコロジカル近代化」(政治経済動員フレーム)を用いる分析視座を提案する。なお,相補性を重視した分析視座であるが,2つの理論は「対等」や「並列」の関係には置かれていない(本文参照)。本提案は「日本の環境社会学が蓄積してきたツールや問題意識を活用しにくい研究領域」といわれる気候変動問題に対して,悲観論にも楽観論にも陥らずにアプローチするための,1つの選択肢を志向する。とくに,気候変動問題について考えるうえで無視できない社会的事象となりつつあるESG投資の分析を念頭に置いている。続いて,生産の踏み車論が見通す悲観的な閉塞状況を打開しうる論理が,生産の踏み車論の中心的な論理である「生産の踏み車モデル」とこれが内在する「環境と社会の緊張関係」から導かれることを示す。そのうえで,今後,この理論的な予測(作業仮説)を検証する準備として,ESG投資をめぐるNGOの金融システム介入(ESG投資の本格化の土壌となる気候変動関連情報の開示にまつわる経緯)を題材に,環境社会学的な分析を試みる。