2022 年 28 巻 p. 41-56
2015年の国土形成計画に盛り込まれたグリーンインフラでは,自然環境が有する多様な機能を上手に活用し,持続可能で魅力ある地域づくりを進めることが掲げられている。しかし,マンパワーの減少が避けられないなかで,それを実現するための維持管理のあり方は明確にされていない。研究対象地である熊本県阿蘇地域は,日本最大規模の半自然草原を誇るが,農業形態や生活様式の変化に伴い多くの面積が失われてきた。大部分は入会権者を中心とする地縁の管理組織によって維持されているが,高齢化や担い手不足により,野焼きや延焼を防ぐための輪地切りを行うことが難しくなってきている。そこで本稿では,草原と草原が有する公益的機能の存続は,それらを維持管理するコミュニティの力に負っているという認識の下,2016年に地元の管理組織を対象に実施された「阿蘇草原維持再生基礎調査」を用いて,草原管理のボトルネックとなっている労働力上の要因について閾値分析を行った。輪地切りでは,1人当たりの輪地切り延長と出役者の平均年齢が課題で,とくに前者は,60 m/人以下に抑えることが重要であることが明らかになった。野焼きでは,出役者の数や40代以下の担い手世代の割合などの人口構造上の課題が見られた。1人当たりの野焼き面積では傾向が見られなかったものの,2 ha/人が1つの目安になることが示唆された。ボランティアによる支援活動は,これらの作業量を軽減することに大きく貢献していた。GIとしての草原を下支えするコミュニティの存在は大きく,本稿は,特定された閾値に基づき,草原維持が不可能な状態になることを回避するための支援や対策のあり方を提示した数少ない研究である。