抄録
症例は69歳女性.平成6年右腎癌にて右腎全摘術を施行した.病理診断は腎細胞癌clear cell carcinoma, grade 2, pT1であった.以後外来にて経過観察されていたが平成18年CTにて右腸腰筋内に淡い造影効果を伴う3×3cm大の腫瘤を指摘された.CTガイド下針生検では腎細胞癌の転移が疑われたが確定診断には至らず, 術後12年を経過していることも考慮し, 腫瘍摘除術を施行した.病理組織学的に腎癌の腸腰筋への転移と診断された.術後放射線療法とインターロイキン2による免疫療法を行った.腎細胞癌の骨格筋への転移は稀であり, これまでに海外での報告を含め32例が報告されている.他の臓器に転移を認めない骨格筋のみへの転移例が自験例を含め17例と多く, 術後転移が出現した24例では, 14例が腎摘後5年以上経過していた.また10年以上の遅発性転移が11例あった.