日本泌尿器科学会雑誌
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原著
尾道市立市民病院人間ドックでのPSAによる前立腺癌検診の有用性:癌発見例の臨床的重要性の分析
大枝 忠史久住 倫宏高本 篤
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キーワード: 前立腺癌, PSA, 人間ドック
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2010 年 101 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

(目的) 尾道市立市民病院人間ドックでのPSAによる前立腺癌検診の有用性について検討した.
(方法) 1997年4月から2007年12月までの10年9カ月の間に当院人間ドックにおいてPSA単独による前立腺癌検診を施行した延べ1,234例(中央値59歳)を対象とし,PSAの陽性率,二次検診受診率,生検施行率,癌発見率および癌症例の治療成績と臨床的重要度について検討した.
(結果) PSAが高値を示したのは82例(6.6%)で,年齢は42~87歳(中央値64歳),PSA値は3.1~66.5ng/ml(中央値5.4ng/ml).生検は35例に施行し15例に癌を検出した.生検陽性率は42.9%,癌発見率は全体の1.2%であった.癌が発見された症例の年齢は58~81歳(中央値70歳),PSA値は4.2~66.5ng/ml(中央値10.3),臨床病期はT1cN0M0が12例,T2aN0M0以上が3例,生検でのグリソンスコア(GS)は3+3が4例,3+4以上が11例であった.初期治療は前立腺全摘除術12例(術前内分泌療法併用1例,術後放射線外照射併用2例),内分泌療法2例,放射線外照射1例であった.予後は観察期間8~107カ月(中央値 60カ月)で全例生存,再発・再燃なしでコントロール良好14例,再燃あり1例であった.いわゆる「臨床的に重要でない癌」(触知しない限局癌かつ腫瘍体積0.5ml未満かつGS6以下)は1例のみであった.
(結語) 人間ドックで発見された前立腺癌はほとんどが臨床的に重要な癌であり,PSA検診は過剰治療に結びついていない.したがって人間ドックでのPSA検診を行うことは有意義である.

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© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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