日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
末梢血幹細胞移植併用化学療法と残存腫瘍全摘出による集学的治療にて完全寛解を得た後腹膜原発性腺外胚細胞腫瘍の1例
山下 高久諸角 誠人高木 大輔吉永 敦史石井 信行松田 隆晴寺尾 俊哉山田 拓己
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2010 年 101 巻 3 号 p. 565-569

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抄録
症例は37歳男性,発熱および腰痛を主訴に受診.血液検査では,AFP,hCG,LDHが著明に上昇していた.CT検査では,多発肺腫瘍,左鎖骨上リンパ節腫脹,左腋窩リンパ節腫脹および巨大な後腹膜腫瘍を認めた.多発転移を伴う精巣腫瘍を疑ったが,精巣内には腫瘍や微小石灰化といった明らかな異常を認めなかった.以上より,多発転移と血中hCG異常高値を伴った予後不良群の後腹膜性腺外胚細胞腫瘍と診断した.
導入化学療法として,BEP療法(ブレオマシシン,エトポシド,シスプラチン)を3コース施行したところ腫瘍マーカー低下の鈍化を認め陰性化もしなかったため,救済化学療法であるTIP療法(パクリタキセル,イフォスファマイド,シスプラチン)へ変更した.末梢血幹細胞移植を併用しほぼ遅延することなく4コース施行され,化学療法終了後,すべての腫瘍マーカーは陰性化した.しかし,後腹膜腫瘍,左鎖骨上および左腋窩リンパ節が残存していたため,後腹膜リンパ節郭清,左鎖骨上リンパ節郭清,腋窩リンパ節郭清を施行した.摘出した標本には明らかなviable cellは認めなかった.現在術後24カ月経過しているが,再発を認めていない.
著しく進行した予後不良群の性腺外胚細胞腫瘍症例でも,われわれの症例のように末梢血幹細胞移植併用による化学療法を施行し残存腫瘍を摘出する集学的治療により,予後が期待できるものと考えられた.
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© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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