抄録
50歳,男性.2カ月前より疼痛を伴った両側陰嚢内腫瘤を認めたため当科受診.両側精巣上体炎を疑い,2週間抗生剤と鎮痛剤を投与したが無効であった.陰嚢エコーにて陰嚢内の悪性腫瘍も否定できないため高位左精巣摘除術施行.病理組織学的所見にて壊死性血管炎を認め,結節性多発動脈炎の診断となり,当院リウマチ科において精査施行.結節性多発動脈炎における全身症状や血液免疫学的検査に異常を認めないことより,精巣上体発症の局所性結節性多発動脈炎と診断された.対側に対してはステロイド療法を勧めたが,陰嚢内の疼痛が強いため患者が強く外科的治療による早急な症状改善を希望したため,対側に対しても高位精巣摘除術を施行.病理組織学的所見は左側同様に結節性多発動脈炎であった.術後自覚症状は消失し,術後2年経過した現在再発等は認めていない.文献的検索では,両側陰嚢内発症の局所性結節性多発動脈炎は第一例である.