抄録
症例は,29歳男性.陰嚢腫大を主訴に前医を受診し,両側精巣腫瘍の診断のため当科に紹介された.精子を凍結温存後,両側高位精巣摘除術を施行した.右精巣はセミノーマ+未熟奇形腫の混在で,左精巣はセミノーマであった.腫瘍マーカーも速やかに低下し,CTにて転移を認めなかったため,ステージI期の診断で外来にて経過観察することとした.術後3カ月目のCTにて両肺野に腫瘤影を認め,精巣腫瘍の再発が疑われたが,炎症の可能性も否定できず,FDG PET-CT検査を施行した.PET-CT検査では肺だけでなく,後腹膜リンパ節(傍下大静脈リンパ節)にも集積を認めた.精巣腫瘍再発,肺および後腹膜リンパ節転移の診断にて,BEP療法を3コース施行した.肺転移は消失したが,後腹膜リンパ節転移は縮小したものの残存していた.PET-CT検査では,肺にもリンパ節にもFDGの集積を認めなかった.原発巣の組織に,未熟奇形腫が混在していたこともあって,後腹膜リンパ節郭清(射精神経温存)を施行した.病理学的にviable cellや奇形腫の組織は認めなかった.現在まで腫瘍の再発なく経過観察中である.また,テストステロンを補充しながら十分な勃起を得て性行為も可能である.