日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
FDG-PET/CTが診断の一助となった原発性精嚢癌の1例
水野 伸彦藤川 直也林 成彦村上 貴之鈴木 康太郎池田 伊知郎
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キーワード: 原発性精嚢癌, PET, 化学療法
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2012 年 103 巻 6 号 p. 704-707

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抄録
原発性精嚢癌は極めて稀な腫瘍であり,近接臓器由来の腫瘍による精嚢浸潤を鑑別する必要があり,確定診断が困難である.我々は,Fluorine-18 2-deoxy-2-fluoro-D-glucose(FDG)-Positron Emission Tomography(PET)/Computed Tomography(CT)が診断に寄与した一例を経験したため,ここに報告する.症例は65歳,男性.食思不振および便秘を主訴に外来受診.超音波検査で両側水腎症を認め,腎後性腎不全と診断し腎瘻造設術を施行.CTおよびMRIで骨盤底部から精嚢と一致する部位に腫瘤を認めた.経直腸的腫瘍生検で免疫組織学的検査上CA125およびCEA,CK7が陽性でPSA陰性の腺癌を検出.血清腫瘍マーカーはCEA,CA125,CA19-9が高値を示した.FDG-PET/CTを施行し,精嚢にFDGの異常集積を認めた.消化管内視鏡では腫瘍を認めず,経尿道的膀胱生検および経会陰的前立腺・精嚢生検では精嚢からのみ腺癌を認めたことから,原発性精嚢癌の診断に至った.Maximum androgen blockadeおよび全骨盤への放射線療法を施行し,血清CA125の低下を認めた.治療開始6カ月より再度上昇し,12カ月でCT上腫瘍の増大を認めたため,Estramutineへ薬剤を変更した.19カ月で肝転移が出現.Docetaxel+Cisplatinによる抗癌化学療法を2コース施行したが,肺塞栓の発症および直腸浸潤部位よりの出血コントロール困難で全身状態不良となり,治療開始から22カ月で死亡した.
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© 2012 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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