2015 年 106 巻 4 号 p. 255-263
(目的)経尿道的電気凝固術(Transurethral electrocoagulation:TUC)は,頻度は高くないが一定の確率で必要となり,QOLの低下につながる.TUCに至った症例を臨床的背景を中心に検討した.
(対象と方法)2001年から2011年までに慶應義塾大学病院においてTUCを施行した76例(65人)を対象とし,患者背景を検討した.
(結果)原疾患の内訳は膀胱腫瘍31例,前立腺肥大症13例,前立腺癌13例,結節性動脈周囲炎3例,子宮頸癌3例,その他13例であった.膀胱腫瘍31例中26例,前立腺肥大症13例中12例がTURに関連した症例であった.TURP後のTUC症例での術前推定前立腺体積は,尿道カテーテル抜去前のTUC症例で66.2ml,抜去後のTUC症例で46.1mlであり,抜去前TUC症例で有意に大きかった(p=0.045).放射線治療後のTUC症例は21例で,放射線治療からTUCまでの平均期間は3.4年(7カ月~10年)であった.
(結論)TUC症例の原疾患は膀胱腫瘍,前立腺肥大症,前立腺癌が全体の75%を占めていた.TUCの時期は,TURBT後のTUC症例では術後1週間以内が最多で,その後経時的に漸減した.TURP後のTUC症例は全例術後3週間以内であった.また,放射線治療から比較的長期間が経過してもTUCは起こりうると考えられた.