主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
p. 139-
【目的】脳血管疾患患者における歩行能力改善には多要因の影響を受けるとされる.回復期リハビリにおいて,これらの影響を考慮したうえで予後予測を行うことは重要である.一方,多要因の影響を含んだ思慮ではセラピスト間でばらつきやすい.そこで本研究では発症30 病日目の運動機能,バランス能力,認知機能, 年齢, 病前ADL と退院時FAC との関連を重回帰分析にて調査し, 最も影響のある因子の抽出および,抽出された項目と退院時FAC との関連を示すことを目的とする.
【方法】2019 年4 月から2020 年3 月までの間, 当院回復期病棟に脳血管疾患の診断にて入院し,回復期病棟から退院した74 例を対象とした. 調査項目は, 基本情報として, 性別, 年齢, 病前ADL を調査した. 機能評価として退院時FAC, 30 病日目の下肢BRS, HDSR, バランス能力を調査した. バランス能力はFBS 細項目の座位, 立位, 閉脚立位, 段差踏み換え, 片脚立位項目を採用した. 以上の項目をカルテより後方視的に調査し, 統計学的処理として, 退院時FAC を従属変数, 下肢BRS, バランス能力, 認知症有無, 年齢, 病前ADL を独立変数として重回帰分析を行った.
【倫理的配慮】当院倫理委員会の承認を受け実施した. (承認番号:904)
【結果】重回帰式の独立変数として30 病日目バランス能力, 認知症有無, 病前ADL が選択された. 自由度調整済み重相関係数R2 乗は0.69 であった. 標準偏回帰係数は30 病日目バランス能力で0.54, 認知症で0.31, 病前ADL で0.21 であり, バランス能力が最も影響度の高い因子として抽出された.
【考察】重回帰式の精度は高く, 独立変数として30 病日目バランス能力, 認知症有無, 病前ADL が選択された.
中でもバランス能力を考慮し予後予測することの重要性が示された. これは先行研究を支持する結果であると共に, 本研究はFBS の細項目を採用しており, 臨床現場での評価の簡便性という観点から, 退院時歩行能力の有用な予後予測の指標になり得る.