2017 年 108 巻 1 号 p. 12-16
(目的) 高齢患者における前立腺癌の外科的治療は意見の分かれるところである.ただ,ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は,従来の術式と比較し,侵襲の小さい手術である.それゆえ,当院では高齢患者においても全身状態が良好(PS≦1)ならばRARPを施行している.今回,当院でRARPを施行した75歳以上の高齢患者について,患者背景や手術成績などの検討を行った.
(対象と方法) 2013年7月から2016年4月までに当院でRARPを施行した300例のうち,手術時の年齢が75歳以上を高齢群(n=68),75歳未満を若齢群(n=232)とした.2群間における患者背景,手術成績などをレトロスペクティブに比較し,検討した.
(結果) 手術成績において,神経血管束温存の有無(高齢群:5.9% vs若齢群:17.7%,P=0.0192)を除いて,2群間に有意差を認める項目はなかった.特に,術中・術後合併症において,2群間に有意差を認めなかった(Clavien-Dindo分類グレードII以下の合併症:7.4% vs 3.9%,P=0.322,Clavien-Dindo分類グレードIII以上の合併症:0.0% vs 2.2%,P=0.592).断端陽性率,術後12カ月のPSA再発率(PSA>0.2ng/ml),術後12カ月の尿禁制率(pad≤1/day)において,2群間に有意差を認めなかった.
(結論) 75歳以上の高齢者においても,RARPは安全に施行できる.全身状態が良好な高齢の前立腺癌患者において,RARPは有用な治療方法になりうる.