2017 年 108 巻 1 号 p. 35-40
67歳の女性.頻尿および肉眼的血尿を主訴に来院し,膀胱腫瘍と診断された.TURBTを施行し,病理組織診断は浸潤性尿路上皮癌(G2>G3,pT2以上)であった.膀胱温存を強く希望したため,MVAC療法2コース,動注化学療法およびシスプラチン併用放射線治療を施行した.その後4回のTURBTとBCG療法を2コース行ったが,初回TURBTから19カ月後に右肺に孤立性転移を認めた.その後,25コースの多剤併用化学療法と肺転移に対する放射線療法,尿道再発に対する切除などの集学的治療を施行した.肺の一部に放射線性肺臓炎をきたしたが,放射線治療後26カ月間は肺転移の明らかな増大はなくコントロールされた.両側の尿管腫瘍および両側の腎盂腫瘍が発生し,腎盂腫瘍からの高度の出血のため2回入院を要したが,2回とも化学療法を施行後に出血は消褪した.肝転移の増大により閉塞性黄疸をきたし死亡したが,performance statusを保ちながら集学的治療を行うことにより肺転移出現後67カ月間生存した.