日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
症例報告
Mohsペーストが有用であった尿路上皮癌皮膚転移の1例
増本 弘史藤原 政治
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 108 巻 1 号 p. 41-44

詳細
抄録

症例は71歳男性.無症候性肉眼的血尿にて当科紹介初診となり,精査にて両側尿管癌および前立腺癌の診断であった.両側尿管癌に対して異時性に両側の腎尿管全摘除術を施行し,前立腺癌に対してホルモン療法を開始した.3カ月後に膀胱鏡にて多発性膀胱内再発癌を認めたため,膀胱全摘除術を施行した.その後2年間は遠隔転移や局所再発を認めなかったが,亀頭部腫脹にて当科再診し陰茎癌の診断であった.陰茎部分切除術を施行したが,手術時に下腹部皮膚に1cm大の硬結を伴う結節を認め,同部位の楔状切除を同時に施行した.病理組織学的診断はいずれも尿路上皮癌で,術後から皮膚転移巣は下腹部を中心に多発,急速に増大し出血や浸出液による悪臭を伴った.Mohsペーストを塗布し局所治療を行ったところ,痛みや浸出液は劇的に改善し,癌性疼痛として使用していた麻薬を中止できるまでにQOLは改善した.その後,肝転移を認めGemcitabineとPaclitaxelによる化学療法を施行したが奏功することなく3カ月後に癌死した.尿路上皮癌の皮膚転移は非常にまれな疾患であるが,抗癌化学療法が奏功せず緩和医療となる症例も多い.このような症例に,著しく低下するQOLを維持するために,Mohsペーストを使用する価値は多大にあると考えられる.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top