日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
症例報告
腎Mucinous tubular and spindle cell carcinomaの術後リンパ節転移に対し外科的切除を行った一例
三神 晃遠藤 勇気柳 雅人根本 勺濱﨑 務木村 剛鈴木 康友近藤 幸尋
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 108 巻 1 号 p. 30-34

詳細
抄録

Mucinous tubular and spindle cell carcinoma(MTSCC)が腎摘除術7年後にリンパ節転移をきたした症例を経験したので報告する.症例は87歳男性.右腎腫瘍を指摘され当科紹介受診した.CTにて6.5×6.0cmの右腎腫瘍を認め,右腎癌cT1bN0M0の診断にて腹腔鏡下右腎摘除術を施行した.当時の病理診断はPapillary renal cell carcinoma(type1)G2 pT1b INFαであった.手術後7年経過しCTにて下大静脈前リンパ節および右総腸骨動脈リンパ節の増大傾向を認めた.腎癌術後リンパ節転移を疑い,腹腔鏡下後腹膜リンパ節摘除術を施行した.病理検査にてMTSCCのリンパ節転移が疑われ,原発巣を再評価したところ,同様の組織学的所見を認め,MTSCCの術後リンパ節転移と診断された.術後2年が経過した時点で再発転移は認められていない.MTSCCは2004年よりWHO分類へ新たに加わった腎癌の組織型である.病理学的には低異型度の立方形細胞および紡錘形細胞による乳頭管状構造,及び間質の豊富な粘液を特徴とし,臨床経過は一般に予後良好とされている.報告例は未だ限られており,中でも転移をきたした症例はわずかである.術後リンパ節転移に対し外科的切除を施行した本症例は最初の報告である.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top