2017 年 108 巻 2 号 p. 87-95
(目的)本研究は上部尿路癌におけるペリプラキンおよび他のプラキンファミリー蛋白の発現変化を検討し,臨床病理学的因子との関係を解明することを目的とした.
(対象と方法)2000年4月から2005年12月に,東京慈恵会医科大学泌尿器科にて手術を受けた上部尿路上皮癌(腎盂癌および尿管癌)患者57名を対象とした.癌部および非癌部におけるペリプラキン,エンボプラキン,プレクチン,デスモプラキンの発現を免疫組織染色にて解析し,臨床像と比較検討した.
(結果)上部尿路癌組織におけるペリプラキン発現は,正常尿路上皮に比べ,強陽性を示す割合は有意に低下していた(P<0.0001).またエンボプラキンおよびデスモプラキンの発現も,強陽性を示す割合は癌部で有意に低下していた(それぞれP<0.0001).カプラン・マイヤー法およびログランク検定を用いた検討では,ペリプラキンとエンボプラキンの発現は予後と有意な相関を認めなかったが,デスモプラキンの強発現は癌特異生存率および全生存率が有意に低く(P=0.023および0.034),プレクチンの強発現は非転移生存率が有意に低かった(P=0.034).
(結論)上部尿路上皮癌において,プラキンファミリー,特にデスモプラキンは予後予測マーカーとなる可能性が示唆された.