2017 年 108 巻 2 号 p. 80-86
(目的)前立腺がん放射線治療後の放射線性膀胱炎(radiation induced cystitis:以下RC)はしばしば遭遇する有害事象であり尿路変更を要す症例も一部存在する.
今回我々は前立腺がん放射線治療後のRCについて検討を行った.
(対象と方法)2005年4月から2015年3月までに前立腺がんに対して根治照射を行った199例(以下:根治照射群)および前立腺全摘術後のAdjuvant/Salvage照射を行った104例(以下:adj/sal群)の計303例についてRC発症リスクや治療法についてRetrospectiveに検討を行った.
(結果)観察期間中央値は37カ月(1~132カ月)で,全303例のうちRCを発症したのは30例(9.9%)であった.根治照射群に比べてadj/sal群はRC発症リスクが有意に高かった(4.5% vs 20.1%,p<0.01).RC30例のうち20例は外来治療で軽快した.10例は入院加療が行われ,6例は尿路変更を要した.
尿路変更6例のうち2例は膀胱摘除を行わなかったが,術後の膀胱出血の遷延により在院日数が膀胱を摘除した4例に比べて長かった.
(結論)前立腺がん放射線治療後のRCはadj/sal照射で有意に多かった.尿路変更を要する症例が約2%に認められ,膀胱摘除をしたほうが術後経過は良好であった.