2019 年 110 巻 1 号 p. 47-51
小児の深在性腎損傷2例を経験した.症例1は13歳女児で自転車乗車中に側溝に転落し左腰部を強打し左側腹部痛が生じたため当院を受診した.CT検査で左腎損傷IIIb型を認め,膵損傷も疑われたため開腹し左腎摘除を行った.左腎は離断されていたが膵臓には異常は認めなかった.症例2は10歳女児で歩行中に転倒し左側腹部をコンクリートの壁に強打し,肉眼的血尿と左側腹部痛が生じたため同日当院を受診した.CT検査で左腎損傷IIIb型を認め腎動脈造影を施行したが明らかな出血部位は認めず保存的に治療した.小児の深在性腎損傷では一般的に保存的治療が推奨されるが,急変に備え全身麻酔下でのinterventional radiology(IVR)が可能である,放射線科医が常勤の施設で行うことが望ましいと思われる.しかし,本例のように高度救急病院への搬送ができない場合には設備やマンパワーに乏しい地方病院においてもIVRに長けた放射線科医と外科医の協力で重篤な小児の腎外傷の治療は可能であると考えられた.