2021 年 112 巻 1 号 p. 38-44
IgG4関連疾患(IgG4-related disease;IgG4-RD)は全身性にIgG4陽性形質細胞浸潤による組織線維化をきたす慢性炎症性疾患である.我々は結節形成型尿管IgG4-RDに対し,経膣超音波ガイド下生検で診断し治療した一例を報告する.
72歳女性.食欲不振のため施行したコンピューター断層画像(Computed Tomography;CT)検査で膀胱左側に壁肥厚を認め当科紹介となる.経尿道的膀胱生検を施行したが病理組織学的異常は認めなかった.退院後,腎盂腎炎を繰り返し発症しCTを施行した所,左下部尿管に結節状腫瘍と水腎症が出現し尿管ステントを留置した.腫瘍は緩徐な増大を認め,逆行性腎盂造影及び経膣超音波ガイド下生検を施行した.左分腎尿細胞診はclassIIIaであった.生検組織の病理組織所見ではリンパ球浸潤と線維化を認め,IgG4/IgG陽性細胞比は0.6,IgG4陽性細胞は30>/HPF(High-Power Field,200倍率)が認められた.血清IgG,IgG4値は1,943,210mg/dlで,尿管IgG4-RDと診断しステロイド治療を開始した.治療1カ月後のCTで腫瘍が消退し尿管ステントを抜去したが,再燃は認められない.
結節形成型尿管IgG4-RDの報告は稀であり,画像所見は悪性腫瘍と類似する.組織生検による確定診断が非常に重要である.