2022 年 113 巻 4 号 p. 128-133
(目的)当院で腎盂尿管移行部狭窄症に対して施行した腹腔鏡下腎盂形成術における手術部位感染(surgical site infection:SSI)や遠隔感染(remote infection:RI),予防抗菌薬について検討した.
(対象と方法)対象は2009年8月から2021年6月まで当院で施行した94例.SSI,RIの発生率やその危険因子,予防抗菌薬投与方法の違いによる発生率の比較検討を行った.
(結果)全体でSSI発生率は2例(2.1%),RI発生率は3例(3.2%)であった.予防抗菌薬ガイドライン遵守群と,それ以前の比較において,SSI,RIとも発生率に有意差を認めなかった.SSI,RI発生リスク因子の検討では有意差を示す項目は認めなかった.
(結論)腹腔鏡下腎盂形成術のSSIやRIの発生率は低値であり,予防抗菌薬を削減できる可能性があると考えられた.今後の課題としてSSIやRIの持続的客観的評価方法の確立,それに基づいた多施設での大規模な調査によるデータの蓄積が重要と考えられた.