2022 年 113 巻 4 号 p. 134-138
症例は36歳,女性.29歳時,子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の際に,両側尿管ステントが留置され,その後術後放射線療法として全骨盤照射,傍大動脈リンパ節照射が施行された.術後4年間は尿管ステント交換のために通院していたが,以後通院を自己中断した.
術後7年目に肉眼的血尿を主訴に前医を受診した.右尿管ステント抜去直後に大量出血し,右尿管動脈瘻の疑いで当院に転院となった.血管造影検査および血管内超音波検査では右総腸骨動脈遠位端に仮性動脈瘤を認めたため,右総腸骨動脈内にステントグラフトを留置し,その後血尿の再燃なく退院となった.退院1カ月後に右水腎症と右腎盂腎炎を発症したため,右腎瘻が造設された.半年後発熱と腎瘻からの出血を来し,CTでは右総腸骨動脈に仮性瘤の形成とステントグラフト滑脱の所見を認めた.血管内治療は困難と判断し,手術にてステントグラフトの抜去と仮性動脈瘤の切除を行った.また大腿動脈―大腿動脈バイパス術を行い右下肢の血流を確保した.現在右腎瘻を定期交換しているが,感染や血尿の再燃なく,下肢の血流障害も認めず,安定して経過している.近年は尿管動脈瘻に対して低侵襲な血管内治療が第一選択となることが多いが,感染を合併した例では血管壁が脆弱化し,仮性瘤の形成やステントの滑脱が起こる場合がある.