日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
後腹膜鏡下右腎摘除術後の左脊柱起立筋コンパートメント症候群に減張切開術が奏効した一例
大石 真之介佐々木 恵亮金澤 耕一郎坂本 昭彦田邊 邦明杉山 和隆松本 明彦朔 伊作久米 春喜
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2024 年 115 巻 1 号 p. 42-46

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抄録

症例は60歳代,男性.右腎細胞癌(cT3aN0M0)の診断に対して,左側臥位,ジャックナイフ位による後腹膜鏡下右腎摘除術を施行した.手術翌日の血液検査でCK 23,038U/Lと高値を認めたが,軽度の左腰痛であったため経過観察とした.術後2日目に左腰痛の増悪,左腰部の腫脹,硬結,知覚鈍麻を認めたため,単純CTを施行したところ,左脊柱起立筋の容積の増大と内部低吸収域を認めた.左脊柱起立筋コンパートメント症候群の診断にて緊急減張切開術が施行された.術後は症状の改善を認め,後遺症なく,術後22日目に退院した.本症例ではジャックナイフ位を補強するために腰部屈曲部に挿入していたクッションによる腰部への圧の増強が脊柱起立筋コンパートメント症候群の発症に大きく関与したと考えられた.側臥位手術による脊柱起立筋コンパートメント症候群は非常に稀であるが,術前体位での可能な限りの除圧や術中の適切な血圧管理等含め,予防を徹底し,万が一,術後に手術台接地面に一致する腰痛を認めた場合は,その発症を念頭に置き,減張切開術を含めた迅速な対応に努める必要がある.

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