日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
膀胱腫瘍に対する膀胱部分切除術の検討
凍結乾燥硬膜を利用した補填について
垣本 滋酒井 英樹久保田 茂弘近藤 厚岸川 正大
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 80 巻 1 号 p. 22-27

詳細
抄録

1986年4月から1987年8月までの1年5ヵ月間に10例の膀胱癌患者 (前壁5例, 頂部1例, 頂部~前壁2例, 側壁2例) に膀胱部分切除術を施行し, その欠損部に凍結乾燥硬膜を用いて被覆した. 術前8例に循環器系の合併症, 糖尿病, 肝硬変が認められ, また80歳以上の高齢者は3例でほとんどの症例が poor risk であった. 手術時間は平均109±26分と比較的短く, カテーテル留置期間は15~42日間, 平均28±8日と比較的長期間であった. 3例に術後2~4週間にわたる創部よりの尿漏れを認め, 1例に一過性のVURを認めたが重篤な尿路感染症は全例に認めなかった. 術後8週目には硬膜の内面は上皮化され他の正常膀胱粘膜とは鑑別困難であった. 術後経過は1例は急性腎不全にて死亡, 1例は術後1年3ヵ月目に腫瘍の再発を認め, TUR-Btを施行したが他は全例再発を認めていない. 以上より凍結乾燥硬膜を用いることにより広範囲な膀胱部分切除術が可能であり, 膀胱頂部, 前壁, 側壁の腫瘍であれば有効な手術法と思われた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top