日本泌尿器科学会雑誌
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生体腎移植における donor specific blood transfusion の効果
間歇的エンドキサン併用
葛西 勲熊野 和雄岩村 正嗣吉田 一成真下 節夫遠藤 忠雄酒井 糾小柴 健飯高 喜久雄内田 久則渡部 浩二
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1990 年 81 巻 3 号 p. 367-371

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抄録

HLAが one-haploidentical の29例に donor specific blood transfusion (DST) を施行した. その内16例に cyclophosphamide (CPM) を併用投与し, DSTに起因した特異抗体の産生率について比較した. さらに, 腎移植後の免疫抑制剤として cyclosporin (CsA) を投与した生体腎移植40例の内19例にDSTを施行し, 移植腎の生着に及ぼすDSTの効果を検討した. DSTのプロトコールは, donor より採血した200mlの新鮮全血を2週間隔で3回, 計600ml輸血し, CPM併用群では, 各DST施行前3日間のみCPM 1.5mg/kg/dayを計9日間経口的に投与した. DST施行例において, 抗T抗体の出現率はCPM非投与群が13例中2例 (15%) に対してCPM投与群が16例中1例 (6.3%) であり, 抗 B-warm 抗体の出現はCPM非投与群が13例中5例 (38%) に対してCPM投与群は16例中3例 (19%) であり, 抗T抗体及び抗 B-warm 抗体の産生率に関してCPM投与群, 非投与群で有意差は認めなかった. 腎移植後にCsAを投与した40例における移植腎生着率はDST施行群で1年生着率95%, 2年生着率89%で, DST非施行群では1年及び2年生着率共に100%であったが両群間で統計学的に有意差はなかった. 以上よりDSTにおけるCPMの間歇的投与は前感作率の低下には有効ではなく, また腎移植後にCsAを投与した症例におけるDSTの効果は見いだせないと思われた.

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