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石橋 道男, 園田 孝夫
1990 年 81 巻 3 号 p.
349-358
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
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内分泌動態と性腺の Glutathion S-transferase の組織化学
野々村 克也, 小山 敏樹, 豊田 健一, 浅野 嘉文, 後藤 敏明, 富樫 正樹, 小柳 知彦, 足立 祐二, 藤枝 憲二
1990 年 81 巻 3 号 p.
359-366
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
全例女子として養育された性染色体モザイク症5例の染色体分析・臨床所見・内分泌動態・内性器所見および性腺の glutathion S-transferase (GST) の組織化学所見につき検討した. 1) 染色体検査は3例が45, X/46, XYq-, 他2例は45, X/46, XYq-/47, XYq-Yq-と45, X/46, XdicYであった. 2) 外陰は4例で陰核肥大・陰唇愈合などの男女中間型を示し, 1例は膣中隔以外正常女性型を示した. 3) 血清LH, FSHは思春期前期においてLH-RHに過剰反応を示し, 思春期以降は基礎値も上昇した. テストテロンはhCG刺激により無反応から低反応で, 全体として原発性性腺機能障害のパターンを示した. 4) 性腺については一側のみ精巣組織を有する混合性性腺形成不全症3例, 両側精巣1例, 両側 streak gonad 1例であった. 内性器では全例に子宮, 両側卵管を認め, 副睾丸組織は5精巣中2性腺, 5streak gonad 中2性腺に付属していた. 5) GSTの組織化学による性腺の検討では思春期前期の精巣は同時期の停留睾丸と同様の所見を示し, 思春期以降は Leydig 細胞の過形成とともに精細管の変性・破壊像がみられた. streak gonad には卵巣顆粒膜細胞様の集落がみられた. 性染色体モザイク症の疾患群は, その性染色体異常により原始生殖腺の分化異常が生じ, さらに内外性器の発育異常として表現される. この形成不全となった性腺は思春期以降, ゴナドトロピン刺激によりますます異形成の程度が進行するものと考えられる.
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間歇的エンドキサン併用
葛西 勲, 熊野 和雄, 岩村 正嗣, 吉田 一成, 真下 節夫, 遠藤 忠雄, 酒井 糾, 小柴 健, 飯高 喜久雄, 内田 久則, 渡部 ...
1990 年 81 巻 3 号 p.
367-371
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
HLAが one-haploidentical の29例に donor specific blood transfusion (DST) を施行した. その内16例に cyclophosphamide (CPM) を併用投与し, DSTに起因した特異抗体の産生率について比較した. さらに, 腎移植後の免疫抑制剤として cyclosporin (CsA) を投与した生体腎移植40例の内19例にDSTを施行し, 移植腎の生着に及ぼすDSTの効果を検討した. DSTのプロトコールは, donor より採血した200mlの新鮮全血を2週間隔で3回, 計600ml輸血し, CPM併用群では, 各DST施行前3日間のみCPM 1.5mg/kg/dayを計9日間経口的に投与した. DST施行例において, 抗T抗体の出現率はCPM非投与群が13例中2例 (15%) に対してCPM投与群が16例中1例 (6.3%) であり, 抗 B-warm 抗体の出現はCPM非投与群が13例中5例 (38%) に対してCPM投与群は16例中3例 (19%) であり, 抗T抗体及び抗 B-warm 抗体の産生率に関してCPM投与群, 非投与群で有意差は認めなかった. 腎移植後にCsAを投与した40例における移植腎生着率はDST施行群で1年生着率95%, 2年生着率89%で, DST非施行群では1年及び2年生着率共に100%であったが両群間で統計学的に有意差はなかった. 以上よりDSTにおけるCPMの間歇的投与は前感作率の低下には有効ではなく, また腎移植後にCsAを投与した症例におけるDSTの効果は見いだせないと思われた.
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尿路結石形成に関する代謝面からの検討
木下 博之
1990 年 81 巻 3 号 p.
372-379
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
1974年1月から1985年12月までの12年間に川崎医科大学泌尿器科を受診し, 尿路結石症の診断のもとに点滴静注腎盂造影を施行した881例中, 海綿腎と診断された者は, 男性19例, 女性19例の計38例で, その頻度は4.3%であった. 年齢分布は16~76歳に亘り, 50歳代が最も多く, 一般の尿路結石症の好発年齢と一致した. 尿所見は, 血尿を認めるものが52.6%, 尿路感染症を証明しえたのは4例 (10.5%) であった. 腎機能検査は, PSP試験, 24時間内因性クレアチニン・クリアランス (Ccr) ではほとんどの症例が正常であったが, 濃縮試験では半数に濃縮力の低下がみられ, 結石による二次的変化と考えられた. 病変部位は, 38例中32例 (84.2%) が両側汎発性でありまた, 38例中26例 (68.4%) が両側腎尿管結石を有していた. 結石代謝は, 尿中燐排泄量の軽度増加, クエン酸排泄量の軽度低下の傾向がみられ, 結石形成の誘因と考えられた. 結石成分は, 蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムの混合結石が28結石中13結石 (46.4%) と多くみられたが, 一般の尿路結石症例と比較すると, 燐酸カルシウム結石の頻度が若干高かった. 酸負荷試験では14例中5例 (35.7%) に尿酸性化障害がみられたが, 障害例の尿中カルシウム排泄量は正常であり, 結石形成には尿の酸性化障害がもたらすアルカリ尿, 尿中カルシウム, 燐排泄の増加およびクエン酸排泄の低下など多くの因子が関与するものと考えられた.
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和志田 裕人, 渡辺 秀輝, 野口 幸啓, 佐々木 昌一, 堀 武
1990 年 81 巻 3 号 p.
380-385
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
1984年2月より1988年4月までに75例の膀胱腫瘍患者に対して接触式Nd:YAGレーザー治療をおこなった. 75例中14例に治療後膀胱全摘出術が施行され, レーザー照射部の病理学的検討をおこなった. 結果: 1. 照射部と非照射部には明瞭な境界があり, 照射部には潰瘍と肉芽形成がみられた. 2. 潰瘍は深部筋層におよんでいたが, 穿孔は1例も認められなかった. 3. 新鮮肉芽には強度の浮腫が見られたが, 照射3週後ぐらいでは線維芽細胞・線維細胞の出現, 明らかな血管新生が認められ, 1年後には周囲組織とは明らかに境界された極めて小さい瘢痕組織となるか, 吸収されていた. 炭化した異物が肉芽にとりこまれ, それを貪食する異物巨細胞が認められた. 4. 肉芽には好中球浸潤が主体であったが, 2例には好酸球浸潤が主体であった. 5. Stage T3の症例では照射部底にがん細胞が残存する可能性のあることが示唆された. 6. 接触照射によるがんの進展については言及することは困難であったが, がん細胞の移植については問題ないと考えられた.
経尿道的治療の対象となる膀胱腫瘍には接触式Nd:YAGレーザー治療は安全に行い得ることが確認された.
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大西 哲郎, 町田 豊平, 増田 富士男, 倉内 洋文, 飯塚 典男, 中内 憲二, 白川 浩, 望月 幸夫
1990 年 81 巻 3 号 p.
386-393
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
組織型の異なる2株のヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌株 (JRC 1; papillary pattern, avascular microvasculature, grade III, JRC 11; anaplastic and alveolar pattern, hypervascular vasculature, grade IV) を用いて, 温熱加温時の経時的腫瘍内血流量の変動を中心に検討した. 915MHzの microwave 発振装置を用いて加温を試み, 腫瘍内の循環血液量は, 42.5℃に上昇した時点で, microwave のパワーを50秒間切り, この間の thermal clearance から bio-heat transfer equation を用いて経時的に算出した.
その結果, 42.5℃以上の腫瘍内温度に到達するために必要なパワーは hypervascular な腫瘍の方が, hypovascular な腫瘍に比較して約1.7倍を要したが, 恒温維持に必要なパワーの変動では, 前者の方がより急峻に減少した. 両腫瘍とも加温に伴って, 腫瘍内血流量の減少を認めたが, 平均血流量では, hypovascular な腫瘍が約1.87倍多かった. また, 実験終了時の thermal clearance の測定からも, hypervascular な腫瘍の血流低下が観察された.
従って, 温熱加温に伴って hypervascular な腫瘍はより血流のうっ滞が強く, この傾向は, 加温時間が長くなるに従って強くなることから, 腫瘍新生血管の著明な腎細胞癌では, 血流の面からより有効な温熱効果が期待できると考えられた.
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精液所見と血中ホルモン値
御厨 裕治, 宮崎 一興, 石堂 哲郎, 高坂 哲, 鈴木 康之, 町田 豊平, 小寺 重行, 池本 庸, 白井 尚
1990 年 81 巻 3 号 p.
394-399
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
脊損患者の雄性生殖機能を評価する目的で精液所見および血中ホルモン値を検討した. 完全損傷患者18名, 不完全損傷者5名, 射精障害患者3名の3群で, 精子数, 運動率, 奇形率は, 強制射精にて得られた精液で測定した. 精子数は3群とも比較的保たれているが運動率では3群とも低下していた. 奇形率は完全損傷患者で最も高率であり, 射精障害患者で最も低率であった.
血中ホルモンはLH, FSH, Testosteron (以後TES) をRIA法で測定し, 受傷後3ヵ月をもって急性期と慢性期に分類し比較検討を行なった. 対象は急性期27例, 慢性期47例で, 急性期8名を慢性期においても測定しその変動を追跡した. FSHは両期を通じて低く, LHとTESは, 慢性期に高値を示す傾向が認められた. 特にTESは8名の追跡調査で全例上昇していた. 以上の成績から脊髄損傷による雄性性腺障害の機序として間質機能の一過性の障害と精子成熟過程への影響が考えられた.
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飯盛 宏記, 千住 将明, 杉本 俊門, 杉村 一誠, 山本 啓介, 岸本 武利, 前川 正信
1990 年 81 巻 3 号 p.
400-407
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
ESWLは, 広く臨床で用いられているが, 衝撃波 (SW) の生体に対する影響は皆無ではない. 著者らは, 実験動物として犬を用いて, 以下の実験を行った. 実験1. SWの腎血流動態におよぼす影響について-microsphere 法により, SW照射前, 一側腎に500回照射後, 1,000回照射後の3回, 腎血流量を測定した. 腎血流量は, 両側ともSW照射前に比べ500回照射後に増加傾向を示し, 500回照射後に比べ1,000回照射後に減少傾向を示したが, いずれも有意の変化ではなかった. 実験2. SWの腎機能におよぼす影響について-
99mTc-DTPAを用いたレノシンチグラフィをSW照射前, 一側腎に1,000回照射後30分, 1週間, 2週間, 4週間に行った. tracer 静注後より, 放射活性が最高値に達するまでの時間は, 30分後照射側で有意に延長し, 対側で有意に短縮した. 放射活性の最高値の比 (照射側/対側) は1週後に有意に減少した. 半減期は, 30分後照射側で有意に延長し, この変化は2週後まで続いた. シンチグラムでは, 30分後で照射側腎の拡大を認めた. 実験3. SWの腎組織におよぼす影響について-SW500回照射直後 (A腎) および1週後 (B腎), SW1,000回照射直後 (C腎) および1週後 (D腎) について, 光学顕微鏡による組織観察を行った. A腎C腎とも尿細管周囲と管腔内への出血を認めたが, B腎D腎にはこれらの変化を認めなかった. 以上よりSWの腎におよぼす影響は, 形態学的に出血・浮腫が考えられ, 腎機能は一時的に低下するが可逆的なものであると考えられた.
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中村 薫, 出口 修宏, 萩原 正通, 中野間 隆, 秦 順一, 田崎 寛
1990 年 81 巻 3 号 p.
408-413
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
hCGに対する単クローン性抗体を用いたサンドイッチ法に基づくhCG Enzyme Immunometric Assay (EIA) と Homologous hCG-βRIAとを併用した分別定量法を用いて, 睾丸腫瘍における human chorionic gonadotropin (hCG) の多様性 (heterogeneity) について臨床的検討を行なった. 対象は1980年から88年に慶応義塾大学及び関連病院にて経験した113例の胚細胞性睾丸腫瘍の術前血清である. Seminoma59例では6例 (10.1%) に intact hCG を認め, 23例 (39.0%) に free hCG-βが陽性であった. 前者6例中4例では Syncytiotrophoblastic giant cell (STGC) を認めた. 17例 (28.8%) では free hCG-βのみの上昇を認めたが, intact hCG は陰性でかつSTGCは認められなかった. Nonseminoma 54例では36例 (66%) に intact hCG とhCG-βが陽性であった. hCG-β/hCG ratio が再発時に275%に増加した症例を認めた. 睾丸腫瘍患者血清中の intact hCG, free hCG-βの分別定量法を用いての heterogeneity 解析は, hCG産生睾丸腫瘍の病理組織学診断および病勢をより正確に把握することを可能とし臨床上有用である.
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服部 良平, 松浦 治, 竹内 宣久, 橋本 純一, 大島 伸一, 小野 佳成, 絹川 常郎, 三宅 弘治
1990 年 81 巻 3 号 p.
414-419
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
膀胱腫瘍例の初発症状として無症候性顕微鏡的血尿を主訴とした症例に注目して検討を行った. 対象は昭和59年1月より昭和62年10月までの3年10ヵ月間に当科を受診した膀胱腫瘍156例で, 男性132例, 女性24例, 平均年齢は62歳であった. このうち無症候性顕微鏡的血尿が初発症状であったものは15例 (9.6%) であった. 当科を受診するまでの過程は次の4群に分類された. I群: 検診にて尿潜血を指摘後, すぐに当科を受診した例 (4例), II群: 検診にて尿潜血を指摘され他医を受診後或は他医にて尿潜血を指摘された後当科を受診した例 (6例), III群: 検診にて尿潜血を指摘されたが放置し症状が出現したため当科を受診した例 (2例), IV群: 他医にて尿潜血を放置され症状が出現したため当科を受診した例 (3例). 尿潜血を指摘後, 診断までの平均期間はそれぞれ2ヵ月, 2ヵ月, 8ヵ月, 62ヵ月であった. 治療として膀胱全摘出術を要したのはI, II群では10例中2例 (20%), III, IV群では5例中3例 (60%) であり, III, IV群で多かった. I, II群ではG
2以上の high grade が4例 (40%) にみられたのに対し, III, IV群では5例中4例 (80%) がG
2であり, III, IV群で腫瘍の grade が高かった. これら15例の初診時の尿細胞診では5例 (33.3%) 陰性であり, 膀胱腫瘍のスクリーニング検査として膀胱鏡検査が必要と考えられた.
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梅川 徹, 江左 篤宣, 植村 匡志, 郡 健二郎, 栗田 孝, 石川 泰章, 井口 正典, 片岡 喜代徳
1990 年 81 巻 3 号 p.
420-424
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
シェーグレン症候群に合併した, 腎尿細管性アシドーシスのため尿路結石を発症した患者4症例を経験した. これらに対して, 腎尿細管性アシドーシス,尿路結石に関する検査結果を検討した. しかし, シェーグレン症候群に特徴的な所見以外は, いわゆる原発性の, 腎尿細管性アシドーシスの検査成績と変りなかった. したがってこれらの患者においては, シェーグレン症候群が主な誘因というよりは, RTAを合併したがゆえに尿路結石が発生したと考えられる. 尿路結石の合併に関しては, 文献的に, また我々の経験した4症例の全てに見られたことからも, かなり高率に発生するものと考える. また, 今回提示した症例のうち1例では, 臨床的にシェーグレン症候群が明かになるまえに, 腎尿細管性アシドーシスや, 尿路結石が発生していた. この意味からも両側性・多発性の尿路結石, 特にその患者が, 中年女性であればなおさらであるが, その背景に腎尿細管性アシドーシスは勿論のこと, さらにシェーグレン症候群の存在を念頭に置く姿勢が重要であると考える.
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再発予測因子の臨床的検討
新家 俊明, 平野 敦之, 上門 康成, 大川 順正
1990 年 81 巻 3 号 p.
425-432
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
表在性膀胱移行上皮癌 (Ta, T1) 137例に対し経尿道的腫瘍切除後の再発予防を目的として, BCG膀胱内注入療法を施行した. BCG注入療法後2年間の再発は, TURのみを施行した無注入群, および, TUR後膀胱内抗癌剤注入療法を施行した他剤注入群に比して, 有意の減少を示した. このBCGの再発予防効果に関して, 本療法の有効性予測因子をその原発腫瘍について検討した結果, BCG療法は対照群と比較し, 特に多発性腫瘍, grade 3腫瘍, Ta腫瘍の再発予防に有効であった. ツベルクリン皮内反応とBCGの腫瘍再発予防効果との間には相関をみとめなかった. BCGによる重篤な副作用はみとめられなかった.
著者らの成績は, BCG膀胱内注入療法が表在性膀胱癌のTUR施行後の再発予防に有効であり, 再発に関する膀胱癌の生物学的態度を変化させうることを示唆し, かつ, 比較的安全な補助療法であることを示した.
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畑地 康助, 繁田 正信, 苔原 修, 松木 曉, 福島 雅之, 嘉手納 一志
1990 年 81 巻 3 号 p.
433-438
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
進行性尿路上皮癌症例17例にM-VACを施行した. 10例は2方向測定により評価可能であったが, 残りの7例は全身状態の悪化や, 先行して行なわれた治療による萎縮膀胱のために評価が不可能であった. 評価可能10例は男性7例, 女性3例で, 年齢は50~83歳 (中央値69.5歳), 施行サイクルは1~3サイクル, performans status は0~2であった. 効果判定はCR 2例, PR 4例, NC 4例で, 部位別ではすべての部位に有効であったが, リンパ節と肺転移にCRが認められた. CR 2例のうち1例は再発し死亡, PR 4例では1例死亡, 2例は再増大を認めるも生存中, 1例は残存腫瘍を手術的に切除し生存中である. PRの再増大2例に対してM-VACを再施行したが効果は認められなかった. NC 4例のうち2例は死亡し, 残りは生存中である.
効果判定ができなかった7例を含めて, 血尿や疼痛などの自覚症状に対する効果は速効性で持続的であった.
17例31サイクルの大部分で, 薬剤の副作用は認められた. 消化器症状, 食指不振や脱毛は可逆的で, 投与量の制限にはならなかったが, 血液に対する副作用は高度で, 骨髄抑制のために17例中3例 (17.6%) が死亡した.
M-VAC療法は進行性尿路上皮癌に対する有効な化学療法であるが, 薬剤の副作用, 特に骨髄抑制が高度であったので, この治療は細心の注意を払って施行すべきである.
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田代 和也, 鳥居 伸一郎, 岩室 紳也, 町田 豊平, 増田 富士男, 大石 幸彦, 上田 正山, 望月 篤, 浅野 晃司, 木戸 晃, ...
1990 年 81 巻 3 号 p.
439-446
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
新しい腎盂尿管癌の取扱い規約に基づき1976年より1988年までの最近13年間に経験した腎盂尿管癌160例の臨床的検討を行った. 対象は腎盂癌71例, 尿管癌80例, 腎盂尿管癌9例であった. 年齢は39歳から91歳で平均63歳, 性別は男子117例, 女子43例であった. 患側は右が63例, 左が97例であった. 主訴は血尿が最も多く81.8%であった. IVPでは99.7%に充影欠損, 水腎症, 無造影などの異常所見をみた. 手術法は生検のみ6例, 部分切除術10例, 亜全摘術5例, 単純全摘術16例, 根治的全摘術123例であった. 補助療法は放射線治療が32例に, 化学療法が123例に施行された. 病理組織分類では156例が移行上皮癌であったが, 扁平上皮癌と腺癌がおのおの1例づつであった. 腎盂尿管癌の治療成績は全160例で1年86.8%, 3年73.0%, 5年65.3%, 10年45.6%であった. リンパ節転移を認めたものは5年生存率0%, 臓器転移をみたものでは1年生存が0%であった. 腎盂癌と尿管癌で予後に差はなかった. 腎盂尿管癌の摘出標本所見で予後に影響する因子としては腫瘍の大きさ, 数, 細胞異型度, 浸潤度, リンパ節転移の有無, 臓器転移の有無などで従来の報告と同様であった. しかし, 細胞異型度は浸潤度, 転移の有無に比例し, 予後を規定する最大の要素と思われた.
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長井 辰哉, 高士 宗久, 坂田 孝雄, 高村 真一, 岡村 菊夫, 金井 茂, 佐橋 正文, 下地 敏雄, 三宅 弘治
1990 年 81 巻 3 号 p.
447-453
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
1970年7月から1988年6月までの19年間に当科において入院加療を施した腎盂尿管腫瘍62例について統計学的検討を加えた.
男子50例, 女子12例, 男女比は4.2:1で, 年齢は41歳から87歳 (平均62.1歳), 男子は60歳台, 女子は70歳台の患者が多く, 50歳以上の症例が全体の82.3%を占めた. 喫煙習慣は男子の76.0%, 女子の16.7%にみられた.
初発症状としては肉眼的血尿の頻度が高く43例 (69.4%) に認められた. 組織型は移行上皮癌が最も多く, 90.3%を占めた. 膀胱腫瘍の合併は先行, 同時, 続発をあわせて, 25例 (40.3%) に認められた.
腫瘍発生部位は腎盂のみ29例, 尿管のみ18例, 腎盂, 尿管, 膀胱のいずれか複数臓器, または両側発生を示したもの15例であった. 尿管腫瘍の方が腎盂腫瘍よりも, 有意に high grade であった.
自然尿による尿細胞診の陽性率は57.8%で high grade の腫瘍では陽性率が高くなる傾向が認められた.
腫瘍の大きさについては大きな腫瘍は high stage 例に多かったが grade とは明らかな相関を示さなかった.
組織学的深達度, 異型度とそれ以外の組織学的所見との検討では非乳頭状発育, 脈管侵襲は high stage 例, highgrade 例に多く,γ型の浸潤様式は high stage 例に多かった.
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武田 正之, 片山 靖士, 高橋 等, 今井 智之, 斎藤 和英, 佐藤 昭太郎
1990 年 81 巻 3 号 p.
454-460
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
原発性膀胱尿管逆流症 (VUR) 患者79名に対して, 尿中β
2-microglobulin (β
2-MG) 尿中 N-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) 尿中クレアチニン, 血中クレアチニン値を測定し, 治療法による比較, 手術前後の比較を行い, 以下の結論を得た.
1. 尿中β
2-MG, 尿中NAG値から見ると, 保存的治療群, 手術群ともに grade of reflux の増加につれて尿細管障害は増大する傾向であったが, 保存的治療群の方が尿細管障害を示す症例が多かった.
2. 尿細管再吸収障害は, 手術群の方が保存的治療群よりも高度であった.
3. 高度な尿細管障害のある場合には, 逆流防止術後早期より, 尿細管障害の改善がみられた.
4. 逆流防止術は, 糸球体機能の改善にも有効であった.
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上田 公介
1990 年 81 巻 3 号 p.
461-464
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
ジャーナル
フリー
我々は粘膜付着性抗癌剤HPC-ADM (hydroxypropylcellulose-adriamycin) を開発し, 表在性膀胱腫瘍に用いてきたが, 今回更に抗癌効果を高める目的で, Verapamil を加えたHPG-ADMを作成し, その有用性について検討した. 対象は23例の表在性膀胱腫瘍で, 初発例は6例, 再発例は17例, 病理組織学的診断はTCC G1が4例, G2が15例, G3が4例, 腫瘍形態は, 乳頭単発5例, 乳頭多発7例, 非乳頭単発1例, 非乳頭多発8例, carcinoma in situ 2例であった. 治療方法として, 原則的に Verapamil (25mg) 加HPC-ADM (20mg) を1回膀胱内に注入し, 2~3週後に膀胱鏡で有効と考えられた症例について更に注入回数を増加し, 最終的にその治療効果を判定した. 効果はCRが9例, PRが4例, NCが10例であり, 有効率は56%であった. 副作用は4例 (17.4%) に膀胱刺激症状を認めた.
以上より Verapamil 加HPC-ADM膀胱内注入療法は, 従来の膀胱内注入療法と比較して, 投与量, 投与回数が少ないこと, また効果判定までの期間が短いこと, 副作用が少ないことなどが長所としてあげられる.
膀胱内注入療法は長期間に渡り, 頻回投与すべきではなく, 短期間, 少回数でその有用性を判定し, 無効例に対しては他の治療法に変更し, 浸潤癌を予防することが重要と考える.
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布施 秀樹, 秋元 晋, 赤倉 功一郎, 島崎 淳
1990 年 81 巻 3 号 p.
465-470
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
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1977年より1986年までに千葉大学泌尿器科で経験した骨転移を有する前立腺癌107例のうち, 脊髄麻痺をきたした10例を対象とした. 未治療の5例は, 脊髄麻痺で来院し, 内分泌療法 (去勢および直後より女性ホルモン投与ないし LH-RH analog 投与) を施行した. そのうち1例は, 椎弓切除術および spinal instrumentation も実施した. 外科的療法を併用したものは歩行が可能となったが, 他は不十分な麻痺の改善にとどまった. 内分泌療法が無効ないし, その後再燃し, 脊髄麻痺をきたしたものが5例あり, 化学療法ないし転移部位への照射をおこなった. 1例は椎弓切除術および spinal instrumentation を併用した. これらの多くは麻痺の回復をみなかった.
以上より未治療例に対しては, quality of life の観点より積極的な脊椎手術の実施が望まれるが, ホルモン非依存癌においては, その適応は慎重でなければならないと思われた. なお本手術を施行する場合は麻痺出現後, 可及的早期に行なうことが肝要と思われる.
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膀胱癌に対する根治的膀胱全摘除術と同時に施行した4症例
赤座 英之, 亀山 周二, 簑和田 滋, 東原 英二, 阿曽 佳郎
1990 年 81 巻 3 号 p.
471-474
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
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尿道再発の危険性の少ない4症例の膀胱癌患者において根治的膀胱全摘除術後に腸管を利用した自然排尿可能な膀胱形成術を施行した. 1例では回腸, 盲腸, 上行結腸を用いたが, 他の3症例では回腸のみを用いた. 全例において detuburalization を行った. これら4症例のうち3例は移行上皮癌 (pT
3bN
0M
0, 2例, pT
2N
0M
0, 1例) であり他の1例は腺癌 (pT
3bN
1M
0) であった.
一種の排尿筋, 活約筋協調不全の状態を術後, 新たに呈した1症例を除き, 尿禁制は良く保たれており, 自然り排尿を楽しんでいる. また全例で腎機能は, 正常に保たれている. 術後の合併症は特に認められず, 全例, 腫瘍の再発転移を認めず生存中 (10ヵ月~16ヵ月) である.
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浪間 孝重, 相馬 文彦, 今林 健一, 折笠 精一, 西村 洋介
1990 年 81 巻 3 号 p.
475-478
発行日: 1990/03/20
公開日: 2010/07/23
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症例1 (24歳女性) は緩徐進行性の尿失禁 (14歳時発症) と歩行障害 (18歳時発症) を呈し, 高度な錐体路障害を認めた. 末血中に抗HTLV-1抗体 (1:640) が証明され, HTLV-1 associated myelopathy (HAM) と診断された. 尿流動態検査 (UDS) で, 病期の進行に伴い過活動膀胱と排尿筋括約筋協調不全 (DSD) の増強を認めた. 症例2 (48歳男性) は歩行障害 (32歳発症) と進行性の排尿困難を呈し, 高度な錐体路障害を認めた. 末血中に抗HTLV-1抗体 (1:200) とATL様細胞が証明され, HAMと診断された. 排尿時膀胱尿道撮影で膀胱壁の変形を認め, UDSでは, 過活動膀胱と著明なDSDが認められた. 2症例とも副腎皮質ステロイド剤と尿路機能調節剤を中心とした薬物療法と間欠自己導尿にて排尿障害はそれぞれ改善傾向を示した.
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