日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱腫瘍に対する接触式Nd:YAGレーザー治療後の照射部の病理組織学的検討について
和志田 裕人渡辺 秀輝野口 幸啓佐々木 昌一堀 武
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1990 年 81 巻 3 号 p. 380-385

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抄録

1984年2月より1988年4月までに75例の膀胱腫瘍患者に対して接触式Nd:YAGレーザー治療をおこなった. 75例中14例に治療後膀胱全摘出術が施行され, レーザー照射部の病理学的検討をおこなった. 結果: 1. 照射部と非照射部には明瞭な境界があり, 照射部には潰瘍と肉芽形成がみられた. 2. 潰瘍は深部筋層におよんでいたが, 穿孔は1例も認められなかった. 3. 新鮮肉芽には強度の浮腫が見られたが, 照射3週後ぐらいでは線維芽細胞・線維細胞の出現, 明らかな血管新生が認められ, 1年後には周囲組織とは明らかに境界された極めて小さい瘢痕組織となるか, 吸収されていた. 炭化した異物が肉芽にとりこまれ, それを貪食する異物巨細胞が認められた. 4. 肉芽には好中球浸潤が主体であったが, 2例には好酸球浸潤が主体であった. 5. Stage T3の症例では照射部底にがん細胞が残存する可能性のあることが示唆された. 6. 接触照射によるがんの進展については言及することは困難であったが, がん細胞の移植については問題ないと考えられた.
経尿道的治療の対象となる膀胱腫瘍には接触式Nd:YAGレーザー治療は安全に行い得ることが確認された.

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