日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌患者に於ける腫瘍組織内, 隣接非腫瘍腎組織, 末梢血中の各リンパ球サブセットの比較検討
長瀬 泰森山 信男保坂 義雄東原 英二村橋 勲阿曽 佳郎
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1781-1789

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抄録

腎細胞癌患者18例に於て腫瘍組織内, 隣接正常腎組織, 末梢血中の各リンパ球サブセットをフローサイトメトリーを用いて測定するとともに, 免疫組織学的に各リンパ球サブセットの局在や浸潤様式を検討した. 腫瘍組織内では14例でCD5陽性細胞の比率が最も高かった. また17例でCD8陽性細胞がCD4陽性細胞よりも多く, CD4/CD8比は1以下 (0.7±0.3) であった. CD16陽性細胞は2例 (pT2: 1例; pT3a: 1例) でCD5陽性細胞よりも多かった. 正常腎組織では, 各サブセットの割合は腫瘍組織のそれとほぼ同様であったが, 陽性細胞数は腫瘍組織に比べ明らかに少なかった. 末梢血のリンパ球サブセットは健常人のそれとほぼ同様の結果であり, CD4/CD8比は1以上 (1.9±0.8) であった.
CD8陽性細胞は腫瘍組織で末梢血よりも有意に増加し (p<0.05), 逆にCD4陽性細胞は有意に減少していた (p<0.01). 免疫組織学的検索による腫瘍内浸潤リンパ球の浸潤様式は, 集塊 (cluster) 型, 散在 (single) 型, 混合型の3種類に分類定れた. 腫瘍の悪性度との相関では, grade 1では集塊型/混合型が多く, grade 2では散在型が多くみられた. pTとの相関では, pT3aで散在型が多い傾向がみられた. また, 集塊型ではCD4陽性細胞がCD8陽性細胞を取り囲むように存在する傾向がみられた.

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