日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺集団検診よりみた男子高齢者における排尿困難
今井 強一岡部 和彦小林 大志朗伊藤 一人高橋 修山中 英寿三木 正也登丸 行雄佐藤 仁黛 卓爾
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1790-1799

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抄録

群馬県下の60歳以上男子を対象として行った34,140名の排尿困難アンケート調査と, 前立腺集団検診時に得られた8,219名の問診結果を合わせ, (1) 排尿症状を通して集検例に加わる bias・(2) 加齢と排尿症状の変化・(3) 高齢者における正常排尿状態は如何にとらえるべきか? の3項目について検討した.
若い集検受診者における症状保有率は他の年齢層や同年齢のアンケート調査結果と比べても高かった. また, 集検受診者の約10%が前立腺肥大症・尿閉・前立腺の手術の治療を受けていた. 集検受診者の特徴として60歳以下の受診者は症状保有率が高い事, 医療を受けたにもかかわらず, その医療内容に満足せずに受診する者が多い事が示唆された.
尿勢・「いきみ」・遷延性排尿・尿線途絶の4症状と前立腺の大きさ, あるいは加齢との関連性を検討した. 尿勢は大きさと相関し, 加齢との相関性はわずかであった. 他の3症状は大きさ・加齢とある程度の相関性を認めるものの, 統計的・実質的有意差は認められなかった. 夜間排尿回数は加齢と良く相関したが, 大きさとは実質的有意差は設められなかった.
下部尿路閉塞性疾患の既往歴がなく胡桃大以下の前立腺をもつ60歳以上高齢者における症状保有率は, 尿勢の重篤な衰え約16%,「いきみ」約7%, 遷延性排尿約14%, 尿線途絶約5% (80歳以上では12%) であった. 夜間排尿回数は59歳以下では1回以下, 60から79歳2回以下, 80歳以上3回以下と考えられた.

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