日本泌尿器科学会雑誌
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透析に伴う後天性腎嚢胞に発生した腎細胞癌の免疫学的検討
大西 哲郎町田 豊平増田 富士男鳥居 伸一郎白川 浩波多野 孝史牧野 秀樹
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1991 年 82 巻 11 号 p. 1800-1806

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抄録

免疫組織学的検討を行った腎細胞癌16例中, 透析腎に併発した後天性腎嚢胞 (ACDK) に発生した腎細胞癌2例 (症例1及び症例2) の免疫的環境を検討し, 以下の結論を得た.
1) 腫瘍細胞のMHC発現は, 症例1では class I, class II 及びDR抗原のいずれも, 対照症例に比較して発現率は高かったが, 症例2ではいずれのMHC発現も認められなかった.
2) 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) におけるCD25 (IL-2 receptor) の表出は全ての症例で表出率が低かったが, T細胞受容体 (TCR)-alpha/beta chain は症例1では対照群とほぼ同程度の表出率であったが, 症例2では表出していなかった. TIL subset は, 症例1と対照群間の比率に差はなかったが, 症例2ではいずれの subset についても比率が低かった.
3) 所属リンパ節リンパ球 (RLNL) のCD25は全ての症例で表出がなく, TCR-alpha/beta chain の比率は症例1と対照症例間に差はなかったが, 症例2は表出していなかった, RLNL subset は, 症例1は対照症例に比較してCD3陽性T細胞 (その内の特にCD4陽性T細胞) の比率が高かったが, 症例2では全ての subset 率が低かった.
4) 末梢血リンパ球の subset では, 症例1と対照症例間に差はなかったが, 症例2では症例1及び対照症例に比較して, CD3陽性T細胞の増加と, その内特にCD4陽性T細胞の比率が高かった.
従って, ACDK に発生した腎細胞癌には症例2の様なきわめて免疫学的応答の低い症例が存在することが示唆された.

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