日本泌尿器科学会雑誌
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上部尿路移行上皮癌に対する術後補助化学療法の検討
植村 天受大園 誠一郎林 美樹平尾 佳彦岡島 英五郎青山 秀雄佐々木 憲二小原 壮一橋本 雅善吉川 元祥森田 昇吉田 宏二郎渡辺 秀次平松 侃生間 昇一郎山田 薫馬場谷 勝廣塩見 努窪田 一男丸山 良夫
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1991 年 82 巻 8 号 p. 1273-1280

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抄録

1985年1月より1989年12月までの5年間に奈良医大泌尿器科およびその関連施設で治療した腎盂尿管移行上皮癌症例105例のうち, 根治手術を施行し得た症例は88例で, 性別は男66例, 女22例と3:1で男に多く, 年齢は34~82歳, 平均66.0歳であった. 腎盂尿管癌の Stage 分類は, 腎盂尿管癌取扱い規約に準じて行った. 全症例の1年および3年生存率は91.2%, 74.0%であった. Stage 別3年生存率ではTSが80.5%, TEが41.7%で両群間に有意差を認めた. Grade 別3年生存率ではG1 75.0%, G2 70.1%, G3 75.2%で各群間に有意差は認めなかった. 予後決定因子として stage が重要であると思われた.
術後 cisplatin をベースとした補助化学療法施行群を group 1 (n=26), 非施行群を group 2 (n=62) として検討したところ, 3年生存率は group 1 63.3%, group 2 78.9%と group 2 の方が高かった. しかし, 両群の背景因子をみると年齢において group 2より group 1の方が有意に低かった. そこで, 年齢による差を是正するために age-matched trial を行ったが, 両群間の生存率には差はなかった. 副作用は, 嘔気, 嘔吐などの消化器症状が24例 (92.3%) に, 次いで全身倦怠, 脱毛の17例 (65.4%), 白血球減少15例 (57.7%) が多くみられたがとくに重篤なものはなかった. 以上より, 腎盂尿管癌における術後補助化学療法の効果を検討するには prospective randomize study の必要性が示唆された.

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