日本泌尿器科学会雑誌
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間接作用を含めた新しいIFN-αの感受性試験
腎癌に対する基礎的・臨床的検討
吉弘 悟
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1992 年 83 巻 3 号 p. 338-347

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抄録

IFNの間接作用を含めた感受性試験の開発を試み, 腎癌に対する基礎的, 臨床的検討を行った.
基礎検討では標的細胞としてヒト腎細胞癌ACHN株を用い, 間接作用による抗腫瘍効果を検討するために軟寒天培養の下層に単球 (5×104/dish) とリンパ球 (5×105/dish) を加えた colony 形成法による感受性試験を行った. in vitro でのIFN-αの抗腫瘍効果は濃度依存性であり, 間接作用による有意な抗腫瘍効果の増強が50IU/ml以上で認められた. なお培養上清のサイトカインではTNFαのみが高値を示した.
臨床検討としては31例の腎癌患者の手術検体を用い, 19例 (61%) で有効な colony 形成を認めた. そのうち25例で術前, 術後の血清サイトカインを測定し以下の結果を得た.
1) colony survival rate は培養上清のTNFα値と有意に逆相関した (r=-0.90, p<0.01).
2) IFN-α投与後の血清TNFαは20例中15例 (75%) で上昇し, 投与前より有意に高値であった (p<0.05).
3) IFN投与群では培養上清と血清TNFα値の間に, 有意の関連性を認めた.
4) 評価可能病変を有した7例のうち, 培養上清中およびIFN投与中の血清TNFα値が低値を示した3例はいずれもPD症例であった. 一方TNFαが高値であった4例中3例は1年以上NCの状態であった.
以上より本法はIFNの間接効果を含めた感受性の評価が可能で, TNFα値が抗腫瘍効果と臨床効果の判定材料となりうる可能性が示唆された.

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