日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱知覚に関する研究バルーンカテーテル牽引による尿意と膀胱内圧測定時の尿意との関係について
水尾 敏之大橋 英行寺尾 俊哉谷澤 晶子奥野 哲男
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1992 年 83 巻 3 号 p. 358-367

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抄録

神経因性膀胱を含む種々の疾患患者499例 (男子393例, 女子106例) に対しバルーンカテーテルのバネぼかり牽引による膀胱三角部頚部の知覚 (以下 sensation 値) の測定と膀胱内圧測定を行った. Sensation 値の疾患, 年齢, 膀胱内圧曲線のパターンとの関係および初発尿意 (以下FDV) や最大膀胱容量 (以下MCC) との関連に付いて検討した.
正常男子 (19例) の sensation 値は334.2±159.7g (mean±S. D.) でFDVと強い相関性 (r=0.88) を示し, y=3.75x-189.4の直線性を示した. しかし正常女子 (24例) では sensation 値は377.3±199.5gであり, FDV (r=0.35) およびMCC (0.21) と相関性を認めなかった. 男子のその他の末梢神経障害群の sensation 値 (557.3±314.5g) は正常, 頻尿と慢性前立腺炎, 前立腺肥大症, 頚胸椎疾患群, 腰椎疾患, 脳疾患に比較し有意に大きい値を示した. 女子ではその他の末梢神経障害群 (571.7±279.7g) と正常および腰椎疾患群との間にのみ有意差を認めた. 膀胱内圧曲線のパターン別の sensation 値は男子では normal bladder と overactive bladder に比較し underactive bladder で有意に高値を示し, 各パターン内で sensation 値とFDVは相関性を認めた. 一方 sensation 値とMCCは正常と前立腺肥大症 (男子), 腰椎疾患群 (女子) でのみ有意の相関性を認めた.
男子では膀胱内圧曲線のパターンに関わらず, 女子では normal bladder 例で膀胱知覚は加齢により低下した.
バルーンカテーテル牽引による sensation 値の測定は, 簡便に行え underactive bladder の有無や膀胱の知覚低下のスクリーニングとして有意義と考えられた.

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