日本泌尿器科学会雑誌
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BBN誘発ラット膀胱癌のBCGおよび Adriamycin 膀胱内注入療法による組織学的変化
田中 聡工藤 誠治モーリック アスラフ・ウッデイン工藤 達也古川 利有鈴木 唯司
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1992 年 83 巻 3 号 p. 368-373

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抄録

膀胱移行上皮癌 (膀胱癌) に対する Bacillus Calmette Guerin (BBN) および Adriamycin (ADM) 膀胱内注入 (膀注) による組織学的変化を実験的膀胱癌を用いて比較検討した. ラットにN-butyl-N (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) を飲料水として与え, 投与開始16および17週目にBCG, ADM, または対照群として生食を膀注し, 18週目に屠殺し, それぞれにおける腫瘍の組織学的変化を光顕および電顕的に観察した. その結果, BCG膀注群では表層癌細胞において細胞間隙の開大が認められ, 電顕的には細胞接着装置の減少, 消失が認められた. 細胞間隙が開大しているのみの表層癌細胞になお変性, 壊死は認められず離脱してはじめて変性, 壊死となるように思われた. また腫瘍間質への細胞浸潤は癌細胞の脱落が著しいところでのみ認められた. ADM膀注群では表層細胞より細胞質が泡沫状となり, 電顕的には細胞質の空胞変性が認められた. しかしADM膀注群および生食膀注群では表層癌細胞に細胞間隙の開大は認められなかった.
以上の結果よりADMが癌細胞そのものを崩壊させるのに対して, BCGは癌細胞の細胞接着装置に作用し, 細胞間隙を開大させ表層よりの癌細胞脱落を誘起し, 浸潤細胞は脱落していく癌細胞に反応して浸潤してくるのであって, 一次的に癌細胞の脱落には関与していないことが推察された.

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