日本泌尿器科学会雑誌
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Laparoscopic Nephrectomy の試み
小野 佳成佐橋 正文末永 裕之大島 伸一
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1992 年 83 巻 3 号 p. 390-394

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抄録

最近, 泌尿器科の分的においても腹腔鏡観察下手術が精索静脈瘤根治手術や前立腺癌のリンパ節試験切除術に応用されている. 私共は繰り返す腎盂腎炎により萎縮したと考えられる腎臓を腹腔鏡下手術にて摘出したので報告する. 施行症例は2例で, 56歳女性, 右腎で大きさは7×4×3cm, 56歳男性, 左腎で大きさは7×4×3cmであった. 全麻下に腹腔穿刺, 41CO2による気腹後, 臍下操作孔に腹腔鏡を挿入し, 直視下に同側上腹部に4ヵ所の操作孔を造設した. 同側結腸曲より腹膜を下方, 内側へ切開し, 結腸を対側へ授動し, 腎前面を露出した. 尿管を腎下方で遊離, 切断. 腎静脈, 腎動脈を露出し, clip をかけ切断. 腎上極を剥離, 副腎との間を遊離し, つづいて腎後面を剥離, 腎を遊離した. 臍下操作孔を切開し, 腎を摘出した. なお, 手術前日に腎動脈塞栓術を施行した. 手術時間はそれぞれ221分, 346分, 推定出血量は400ml, 400ml, 摘出腎重量は60g, 約40gであった. 合併症は皮下気腫が両例にみられた. 両例とも12, 14術後日に退院, 社会復帰した. 本術式は現時点では技術的未熟さから生ずる問題もあり, 従来の腎摘出術に比べて優れた方法とは言い難い. しかし, 本術式はいわゆる minimally invasive surgery となる可能性がある方法であり, 今後, 症例をかさね技術的確立をめざす価値があると考える.

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