日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
腎細胞癌における核小体形成部位の検討
阿部 功一正井 基之井坂 茂夫島崎 淳松嵜 理
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 84 巻 4 号 p. 642-649

詳細
抄録

1985年から1990年までの6年間に千葉大学泌尿器科において腎摘出術を施行した腎細胞癌96例のAgNORs数を計測し, これと病理学的所見や臨床経過との関係, 及び予後因子としての意義について検討した. 銀コロイド染色方法は Ploton らの one-step 法に従い, AgNORs数の算出法は Crocker らに準じて出来る限りのAgNORsを計測した.
腎細胞癌のAgNORs数は異型度が高くなるに従い増加した. 細胞型との関係では通常型に比べ多形・紡錘細胞型及びベリニ管癌においてその数が増加していた. pTとの関係では, 全異型度でpT1・pT2とpT3bの間に差を認めたが, 同一異型度内においては各pT間で差を認めなかった. 静脈浸潤度との関係でも, 全異型度でpV0とpV1a及びpV1bとの間で差を認めたが, 同一異型度内では各pV間で差を認めなかった. 摘出腫瘍の最大長径とAgNORs数は相関を示した. 原発巣, 肺転移巣, 後腹膜再発巣のいずれかを画像上で経時的に観察出来た22例において腫瘍倍加時間を求め, 原発巣のAgNORs数との関係を検討した結果, 両者は逆相関を示した. 生存率はpTの進んだ例や高異型度例では低かったが, AgNORsでは全症例でその数の多い群で生存率に低い傾向がみられたものの, 死亡数の多いG3症例ではその差を認めなかった. 以上よりAgNORsは腎細胞癌において独立した予後因子というよりはむしろ組織所見や増殖速度に関連する補助的因子と考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top