日本泌尿器科学会雑誌
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同一患者の原発巣および転移巣より樹立した腎細胞癌株の生物学的性状
佐藤 三洋服部 智任西村 泰司秋元 成太
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1993 年 84 巻 4 号 p. 650-655

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抄録

進行性腎細胞癌患者より4種の培養細胞株HANKS, 即ち原発巣由来のHANKS-Pr, 肺転移巣由来のHANKS-Lu, 肝転移巣由来のHANKS-Li, リンパ節転移巣由来のHANKS-LNを樹立し, その性状を分析した. それぞれは上皮様形態を示し, 多層化がみられた. 現在までに36ヵ月以上が経過し, 継代数も100代を超えている. 核型分析では4細胞株に異常染色体であるt(3;18)(p13;q21) が共通していた. 軟寒天培養ではHANKS-Prが有意に発育が悪かった. 細胞倍加時間はHANKS-Prが20.1時間, HANKS-Luが29.5時間, HANKS-Liが20.1時間, HANKS-LNが22.1時間であった. クラスI主要組織適合抗原はHANKS-PrおよびHANKS-Luで陽性率が高く, クラスII主要組織適合抗原は全ての細胞株においてほとんど発現されていなかった. ヌードマウスへの異種移植性はHANKS-LNのみにみられた.
以上のように元来同じ由来である4種の細胞株は異なった生物学的性状を有していた.

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