日本泌尿器科学会雑誌
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インターフェロンが原発巣および下大静脈内腫瘍血栓に奏効した腎細胞癌の1例
永野 哲郎前田 修細木 茂木内 利明黒田 昌男三木 恒治宇佐美 道之中村 麻瑳男古武 敏彦小林 亨
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1993 年 84 巻 4 号 p. 767-770

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抄録

症例は57歳の男性で, 無症候性肉眼的血尿を主訴に来院した. 諸検査にて右腎静脈から肝静脈流入部におよぶ下大静脈内腫瘍血栓を伴う右腎細胞癌 (T3N0M0V2) と診断した. 心筋梗塞の既往及び狭心症を合併していたため経皮的冠動脈形成術を施行後, シメチジン併用にて天然型インターフェロンαを投与した. IFNを計3億6千万単位投与した4ヵ月後でのCTにて, 右腎は著明に縮小しCT上明かな腫瘍は認めず, また腫瘍血栓は腎静脈分岐部より約5cm頭側まで縮小し血栓に対する縮小率は70%で, 臨床的治療効果総合判定はPRであった. 体外循環下に根治的右腎摘除術及び下大静脈壁部分切除を伴う腫瘍血栓摘出術を施行した. 摘出標本は右腎, 腫瘍血栓を併せて10×10×12cm大, 重量180g. 病理組織学的には原発巣, 腫瘍血栓ともに clear cell subtype, grade 2>grade 1であった. 腎下極, 腫瘍血栓とも広範囲に出血壊死を認め, 炎症細胞浸潤が著明であった. 腎癌の組織学的治療効果判定基準では腎は Grade 1b, 腫瘍血栓は Grade 3であり, IFNの効果と思われた. 腎摘除後13ヵ月後の現在転移, 再発の徴候もなく健在である. IFNが原発巣に対しPR以上の効果を示したのは, 我々の調べ得た範囲では, 本邦でこれまで3例に過ぎず, かついずれも腎は摘除されておらず病理組織学的検索はなされていない. 本例の経験から原発巣に対するIFNの効果も今後検討の余地があると思われた.

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