日本泌尿器科学会雑誌
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右心房内腫瘍血栓を伴う腎癌に対する手術療法の検討
山崎 雄一郎龍治 修伊藤 文夫中村 倫之助合谷 信行中沢 速和東間 紘板岡 俊成横山 正義
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1993 年 84 巻 7 号 p. 1269-1274

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抄録

1985年1月から1992年11月までに当科において治療した下大静脈内腫瘍血栓を伴う腎癌症例は12症例であった. このうち腫瘍血栓が右房にまで達していたのは4症例で全例に根治的腎摘出術と腫瘍血栓摘出術を施行した. 4例中1例に局所リンパ節転移を認めたが遠隔転移を認めた症例はなかった. 腫瘍血栓の摘出にあたり全例に人工心肺を併用し右房切開を施行, 直視下摘出を可能とした. また術中に経食道超音波内視鏡を用いて心房内腫瘍血栓の動きをモニタリングした. 平均出血量は10,430mlで, 1例は術死し他の1例は早期に下大静脈血栓を併発し死亡した. しかし残る2例は生存しており腫瘍の再発を認めていない (平均観察期間21ヵ月). 症例数は少ないが, これらの結果より右房内腫瘍血栓を伴う腎癌症例はそれ以下の下大静脈内腫瘍血栓症例にくらべ予後が悪いと考えられた. その一因として複雑な周術期管理があるが, 手術時のキーポイントとしては腫瘍血栓の完全摘出のコントロールが考えられた.

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