日本泌尿器科学会雑誌
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進行性腎細胞癌の転移巣に対する手術療法
大西 哲郎大石 幸彦飯塚 典男白川 浩波多野 孝史牧野 秀樹冨田 雅之
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1995 年 86 巻 10 号 p. 1505-1513

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抄録

(背景と目的) 腎細胞癌の遠隔転移巣に対する手術施行例の生存率を算出して, 手術療法の限界と適応に関して検討した.
(対象と方法) 対象症例は, 遠隔転移巣に対する手術施行48例 (再発症例: 37例, stage 4B: 11例) である. (結果) P. S. 0は1や2に比較して, また, P. S. 1は2に比較して, さらに急性反応性物質 (赤沈,α2-globulin, C-RP) が1項目異常または異常を認めなかった例は, 2項目以上異常であった例に比較してそれぞれ有意に生存率良好であった. 初診時の stage 別検討では, stage 1および2は手術施行例が未施行例に比較して有意に生存率良好であった. また stage 4Bは手術施行例と未施行例間で臨床的背景因子が大きく異なっていたが, 手術施行例の生存率が未施行例に比較して有意に生存率良好であった. 手術の根治性の有無では, 根治的切除を行った例の生存率が良好の傾向であったが, 非根治的切除例との間に生存率の有意差はなかった. さらに, 手術臓器別検討では単一臓器切除例は各臓器別に生存率の有意差はないものの, 患側副腎や肺転移切除例に術後生存期間の長い症例が多く, 逆に対側副腎や膵転移例に術後生存期間が短かった. また多臓器手術例では一定の傾向はなかった. 手術に加えて施行した療法別検討では, 生存率に有意差はないもののIFNやIL-2併用例に生存期間の長い症例が多かった.
(結論) 遠隔転移巣に対する手術療法は, 以上述べた各因子を考慮した上で慎重に計画することが予後改善につながる重要な点と考えられた.

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