日本泌尿器科学会雑誌
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進行性前立腺癌に対する内分泌・癌化学療法とその臨床・組織学的治療効果の検討
松田 博幸野々村 克也永森 聡篠原 信雄小柳 知彦丸 彰夫松野 正藤枝 順一郎南 茂正森田 肇阿部 彌理川倉 宏一榊原 尚行野島 孝之中園 直樹
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1995 年 86 巻 10 号 p. 1530-1537

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抄録

(背景と目的) 進行性前立腺癌に対し, 初回治療として内分泌療法に癌化学療法を追加することの意義について検討した.
(対象と方法) 1991年1月より2年間に組織学的に前立腺癌と診断された病期D2新鮮例を対象とした. 全例去勢術を行い, A群; エトポシド, B群; エストラサイト, C群; 去勢術のみの3群間で治療効果につき randomized study を行った. また治療後6ヵ月目に組織学的な治療効果をみた.
(結果) 登録症例数はA群18例, B群12例, C群16例の46例であったが, 適格例は44例であった. 適格例における各群間の患者背景に差はなかった. 完全例はA群15例, B群4例, C群14例の合計33例であった. また25例が病理学的に判定可能であった. 治療後6ヵ月時点での, NC以上の臨床的奏効率はA群12/15 (80%), B群4/4 (100%), C群11/14 (78.6%) であったが, 統計学的な有意差はなかった. ただしB群において副作用で脱落する例が有意に多かった. 組織学的効果を各群で比較すると, B群では4例全てが Grade 2以上の効果がみられたのに対して, A群とC群では Grade 1以上の効果は33.3%にすぎなかった. これを前立腺癌の総合評価と比べてみると, 良く相関した.
(結論) 以上の結果より, 病期D2前立腺癌に対する初期治療として, 去勢術とエトポシドないしエストラサイトの併用は, 治療後6ヵ月時点では, 去勢術単独を上回る結果が得られないと考えられた.

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