日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌の腎摘後膵に孤立性転移を来した7症例の臨床的特徴
大西 哲郎大石 幸彦飯塚 典男鈴木 康之白川 浩波多野 孝史冨田 雅之
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1995 年 86 巻 10 号 p. 1538-1542

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抄録

(背景と目的) 腎細胞癌に対する腎摘後, 孤立性膵転移を生じる稀な例の臨床的特徴に関して検討した.
(対象と方法) 腎細胞癌752例中, 腎摘後膵に孤立性に再発を認めた7例を検討対象とした.
(結果) 初診時の年齢は32~67歳 (median=48歳) と腎細胞癌全体に比較して10歳程度低かった. 性差では, 男子が4例, 女子が3例と, 腎細胞癌全体からみると女子の比率が相対的に高かった. 原発巣の左右差は無かった (左が3例, 右が4例). 腎摘時の stage は low stage (stage 1+2) が85.7%を占めた. 原発巣の grade も low grade (grade I+II) が85.7%を占めた. 腎摘後膵へ再発するまでの期間は37~228ヵ月間 (median interval=140ヵ月間) と, 晩期再発症例が71.4%を占めた. 膵内転移部位は, 膵体部を中心に様々な部位に認められた. またその大きさの median は4.25cmであった. 治療法は, 膵切除が5例, 2例が化学療法やIFNとの併用が行われていた. また, 膵治療後6例が膵以外の臓器に再発を認め, これらの内5例が癌死 (median interval=18ヵ月間) していた. 残り2例中1例が癌あり生存 (73ヵ月), 1例が癌無し生存 (4ヵ月) と予後は1症例を除いて不良であった.
(結論) 腎細胞癌の腎摘後孤立性膵転移症例は, low stage/low grade の症例に多く, 若年の傾向であり, 女子にやや多く, 晩期再発症例が多く, 手術的切除後も予後は不良であった.

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