日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
精巣腫瘍における Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA) と Argyrophilic Nucleolar Organizer Region (AgNOR) の臨床的意義
大山 力伊藤 明宏徳山 聡中角 尚誉鈴木 謙一川村 貞文佐藤 信斎藤 誠一吉川 和行星 宣次折笠 精一
著者情報
キーワード: 精巣腫瘍, PCNA, AgNOR
ジャーナル フリー

1995 年 86 巻 10 号 p. 1543-1551

詳細
抄録

(背景と目的) 抗 proliferating cell nuclear antigen (PCNA) 抗体による免疫組織染色と鍍銀染色による argyrophilic nucleolar organizer region (AgNOR) 法を用いて精巣腫瘍の増殖能を評価し, 臨床経過と比較した.
(対象と方法) 精巣腫瘍症例45例と正常精巣10例を対象とした. 検体の10%中性ホルマリン固定時間は24時間以内であった. 患者が精巣腫脹に気付いた時期から術日までの月数をM (月), 摘出腫瘍重量をgとし, 原発巣の増大率を Growth rate=g/Mで概算した.
(結果) PCNA陽性率はセミノーマで70.5±19.1% (mean±S. D.), 非セミノーマで80.4±10.5%, 正常精巣で17.7±7.8%であつた. PCNA陽性率はセミノーマの stage I: 64.4±19.9%とII+III: 83.6±7.3%の間で有意差を認めた (p<0.05) が, 非セミノーマの stage I と stage II+IIIの間では有意差を認めなかった. 核1個あたりのAgNOR数はセミノーマで8.09±1.35 (mean±S. D.), 非セミノーマで6.89±1.43, 正常精巣で4.18±1.60と腫瘍組織で高値を呈したが, 各 stage 間では有意差を認めなかった. PCNA陽性率と原発巣の Growth rate との間には対数関数的相関関係を認めたが, AgNOR数との間には認めなかった. surveillance policy で経過観察定れた非セミノーマ stage I 症例は10例あり, 4例に再発を認めた. これら10例中PCNA陽性率75%以上の6例中4例に再発を来したが, 75%未満の4例は全例再発を認めなかった. PCNA陽性率とAgNOR数との問には, 相関関係を認めなかった.
(結論) 以上よりPCNA陽性率はAgNOR数よりも鋭敏に精巣腫瘍原発巣の増殖速度を反映し, 非セミノーマ stage I を surveillance policy で経過観察する際の再発予測因子としての有用性が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top