日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
腎盂尿管癌の腫瘍発生部位と予後の検討
田代 和也中條 洋岩室 紳也大石 幸彦増田 富士男小野寺 昭一上田 正山木戸 晃飯塚 典男川原 元
著者情報
キーワード: 腎盂尿管癌, 発生部位, 予後
ジャーナル フリー

1995 年 86 巻 2 号 p. 279-282

詳細
抄録

1971年から1991年までの21年間に治療した285例の腎盂尿管癌 (移行上皮癌) のうち手術や剖検で腫瘍の発生部位が確認できた245例について腫瘍の発生部位の検討を行った. 腎盂癌は133例に認めたが, 発生部位は下腎杯34例 (25.6%), 上腎杯31例 (23.3%), 腎盂33例 (23%), 腎盂尿管移行部21例 (15.8%), 中腎杯7例 (5.2%), 腎盂全体7例 (5.2%) の順に多くみられた. 尿管癌128例では下部尿管60例 (46.9%), 尿管下端27例 (21.1%), 中部尿管26例 (20.3%), 上部尿管12例 (9.4%), 尿管全体3例 (2.3%) の順にみられた. 腫瘍の腎盂, 尿管, 膀胱の単独, 併発の組み合わせは, 腎盂単独が101例 (41.2%), 尿管単独が94例 (38.4%), 腎盂と尿管が14例 (5.7%), 腎盂と膀胱が19例 (7.9%), 尿管と膀胱が12例 (4.9%), 腎盂尿管と膀胱が5例 (2%) であった. 腎盂癌の発生部位別の5年生存率は上腎杯55.9%, 中腎杯60.8%, 下腎杯63.8%, 腎盂60.2%, 腎盂尿管移行部63.8%であり, この5群間に統計学的な有意差はなかった. また, 尿管癌の部位別の5年生存率は上部尿管90%, 中部尿管60.8%, 下部尿管66.5%, 尿管下端52.6%であったが, 有意差はなかった. 今回の検討で腎盂尿管癌は上腎杯, 下部尿管, 尿管下端に好発することが判明した. しかし, 発生部位は予後を規定する因子とは考えられなかった.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top