日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
86 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 秋元 成太
    1995 年 86 巻 2 号 p. 241-255
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 秋元 晋, 赤倉 功一郎, 大木 健正, 島崎 淳, 栗山 学, 河田 幸道
    1995 年 86 巻 2 号 p. 256-262
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    従来の前立腺特異抗原 (PSA) のキットで測定限界は1ng/mlであった. 近年, より低値まで測定可能な高感度アッセイキットが開発されたので, 前立腺癌の経時的観察時における有用性を, 従来のキットと比較した.
    術前後に内分泌療法を実施した前立腺全摘除術10例, 前後に内分泌療法を施行した放射線療法9例および放射線療法単独5例, 内分泌療法単独44例, 計68例の前立腺癌について, 治療開始後の血清291検体を用いて, Delfia PSA, マーキットM-PAおよび栄研PSAキットにて測定した. おのおのの測定限界値は0.1,0.5および1ng/mlであった.
    再発を認めない術前後に内分泌療法を実施した前立腺全摘除術および放射線療法と5年以上制癌されている内分泌療法単独において, ほぼ全例栄研キットで1.0ng/mlより大の測定値があったにもかかわらず, 高感度アッセイキットでは測定限界以下であった. 放射線療法単独で加療し再発を認めない3例は高感度アッセイキットでも0.3~1.3ng/mlの間にあった.
    再発例のPSA値の変動を調べた. PSA再上昇日より算出したPSA倍加時間を比較すると, 高感度アッセイキット2キットではほぼ等しく, 栄研キットでのものはより大きな値を示した.
    以上より, 高感度PSAキットは, 内分泌療法や前立腺全摘除術の治療開始後において再発の早期診断に優れていた.
  • 石川 泰章
    1995 年 86 巻 2 号 p. 263-272
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症の成因に関する研究は代謝異常面から主に行われてきたが, 代謝異常だけでその成因をすべて説明することは困難である. そこで本研究では上部尿路の形態学的および尿流動態学的観点から結石成因について検討した.
    形態学的研究では結石側は正常側に比べ, (1) 小腎杯 (乳頭) 数が多い, (2) 分枝数が多い, (3) 腎盂半径が長い, (4) 最下方径が長い, (5) 腎杯総面積が広い, (6) 腎盂面積が広い, (7) 総面積が広い, という結果であった.
    尿流動態学的研究では結石側は正常側に比べ, (1) 蠕動頻度が少なく, 特に上部尿管では有意差を認める. (2) 蠕動間隔差が有意に大きく, 蠕動発生は不規則である. (3) 個人差が大きい, という結果であった. しかし, 収縮圧は腎盂尿管移行部を除き, 正常側と結石側に有意差はなかった. また, フロセマイド負荷により正常側, 結石側ともに収縮圧は減少し, 蠕動頻度は増加した. 蠕動間隔は結石側で著明に減少し, 不規則であった蠕動発生は規則的になった.
    以上2つの研究より, 同一個人においても結石側は正常側に比べ, 尿流量や尿流速が低下し, 尿の停滞や濃縮を招き, 尿路結石を作りやすく, さらに排石に関しても好ましくない状態にあると言える. すなわち, 結石成因の1つとして, 上部尿路の形態および尿流動態の異常が考えられた. また, 水分摂取など利尿作用は代謝面だけではなく, 尿流動態の改善という点からも効果的な再発予防および排石促進法と考える.
  • 三宅 修, 板谷 宏彬, 伊東 博, 辻畑 正雄, 申 勝
    1995 年 86 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症に対する新しい治療として laser を用いた方法は各施設で試みられているが, その成績は従来のTUR-Pに未だせまるものではない. 我々はこれまで行われてきた laser 照射治療とは異なる方法, すなわち fiber を前立腺組織に密着させて蒸散を主たる目的とした Laser TURPを行ったので報告する.
    UltraLine™ fiber を用い, laser 単独: Laser-TURP で11例, laser 照射後電気的切除を行う: Laser assisted-TURP で14例の前立腺肥大症例を治療した. 持続灌流型内視鏡を用い23例を腰椎麻酔下, 2例を全身麻酔下で, 60Wの出力で平均33,000Jの laser 照射を行った. 手術時間は44.6分, catheter 留置期間は6.3日, 術後在院日数は15.5日であった. 術前と術後2ヵ月目の各排尿パラメーターは最大尿流率が8.2→14.6ml/s, 平均尿流率が3.7→7.8ml/s, 残尿量が48→17ml, AUA symptom score が16.1→5.0といずれも有意に改善していた. 前立腺容積も術前と比較し2ヵ月後24%減少していた. 膀胱瘻の造設や輸血, 再手術を要した症例は1例もなく, 合併症は術後一過性尿閉4例のみで非常に安全に施行できた. また症例を積み重ねることで Laser-TURPの手技上の最重要点は high power (60W以上) で contact & slow drag (fiber を組織に密着させゆっくり引く) technique を用い一気に深く組織を蒸散させることであり, これが前立腺部尿道の広い channeling を生み, 従来のTUR-P施行後のように術後早期から患者の自排尿を可能にすると考えられた.
  • 田代 和也, 中條 洋, 岩室 紳也, 大石 幸彦, 増田 富士男, 小野寺 昭一, 上田 正山, 木戸 晃, 飯塚 典男, 川原 元
    1995 年 86 巻 2 号 p. 279-282
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1971年から1991年までの21年間に治療した285例の腎盂尿管癌 (移行上皮癌) のうち手術や剖検で腫瘍の発生部位が確認できた245例について腫瘍の発生部位の検討を行った. 腎盂癌は133例に認めたが, 発生部位は下腎杯34例 (25.6%), 上腎杯31例 (23.3%), 腎盂33例 (23%), 腎盂尿管移行部21例 (15.8%), 中腎杯7例 (5.2%), 腎盂全体7例 (5.2%) の順に多くみられた. 尿管癌128例では下部尿管60例 (46.9%), 尿管下端27例 (21.1%), 中部尿管26例 (20.3%), 上部尿管12例 (9.4%), 尿管全体3例 (2.3%) の順にみられた. 腫瘍の腎盂, 尿管, 膀胱の単独, 併発の組み合わせは, 腎盂単独が101例 (41.2%), 尿管単独が94例 (38.4%), 腎盂と尿管が14例 (5.7%), 腎盂と膀胱が19例 (7.9%), 尿管と膀胱が12例 (4.9%), 腎盂尿管と膀胱が5例 (2%) であった. 腎盂癌の発生部位別の5年生存率は上腎杯55.9%, 中腎杯60.8%, 下腎杯63.8%, 腎盂60.2%, 腎盂尿管移行部63.8%であり, この5群間に統計学的な有意差はなかった. また, 尿管癌の部位別の5年生存率は上部尿管90%, 中部尿管60.8%, 下部尿管66.5%, 尿管下端52.6%であったが, 有意差はなかった. 今回の検討で腎盂尿管癌は上腎杯, 下部尿管, 尿管下端に好発することが判明した. しかし, 発生部位は予後を規定する因子とは考えられなかった.
  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 飯塚 典男, 白川 浩, 波多野 孝史
    1995 年 86 巻 2 号 p. 283-289
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    悪液質様状態を生じるヌードマウス可移植性ヒト腎細胞癌株 (JRC 11) を用いて, 腫瘍の増殖に伴う経時的悪液質様状態の病態に関して検討した.
    その結果, 移植腫瘍の増殖に伴い, 末梢血中にヒトIL-6の増加を認めたが, ヒトIL-1β, ヒトTNF-α, ヒトIFN-γは測定できなかった. 同時に, JRC 11株のmRNA level でのIL-6の発現が確認された. また, 宿主であるヌードマウスの腫瘍重量を除いた体重の経時的測定結果, 腫瘍移植後3週目より対照群 (同週齢の腫瘍未移植ヌードマウス) に比較して有意に体重の減少を認めた. しかし, 腫瘍移植後3週目に移植腫瘍を切除した群では, 切除後体重の再増加を認め, 6週目には対照群と有意差を認めないまでに体重が増加すると同時に, 血中にIL-6は認められなくなった. さらに, JRC 11株の肝, 腎, 脾およびヌードマウスの皮下脂肪重量を経時的に測定した結果, 腫瘍移植後3週目以降対照群に比較して有意に減少を認めた.
  • 犬前立腺に対する実験的研究
    西村 清志
    1995 年 86 巻 2 号 p. 290-295
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    14頭の犬前立腺に対し, 米国C. R. BARD社製90°偏光レーザーファイバー (Urolase®) を用いてレーザー照射を施行し, 前立腺組織の経時的変化につき検討した. 雄ビーグル成犬を全身麻酔後, 背臥位に固定したのち, 腹部傍正中切開にて膀胱前立腺を剥離露出した. 前立腺前面を尿道まで正中切開し前立腺部を十分に露出したのち, 前立腺左右両葉に, それぞれ40ワット, 60ワットの出力で, 60秒間レーザーを照射した. 照射後3日, 1週間, 2週間, 4週間, 8週間, 12週間の時点で屠殺し, 前立腺を摘出した. 写真撮影後, 10%ホルマリン溶液に固定し連続刃片を作成した. 照射面より組織欠損の最深部までの距離, 組織欠損部の表面積および体積は照射後12週目に最大値を示し40ワット/60秒照射群では, 4.75±1.25mm, 4.13±1.13cm2, 3.39±1.58cm3であるのに対し, 60ワット/60秒照射群ではそれぞれ5.75±1.25mm, 4.80±1.95cm2, 4.36±1.99cm3とそれぞれの数値は各期間とも60ワット/60秒照射群の方が高値を示した. 病理組織学的には, 照射後1週から4週までは, 脱落面に凝固壊死物質ならびに液化物質の残存を認めるが, 12週目では上皮の再生が確認できることより, およそ8~12週の間に上皮化が完成するものと推測できた.
  • 出村 孝義, 大山 格, 富樫 正樹, 大橋 伸生, 力石 辰也, 平野 哲夫, 小柳 知彦
    1995 年 86 巻 2 号 p. 296-303
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    血清PSA値が10.0ng/ml以下の症例において前立腺特異抗原 (PSA) とガンマ-セミノプロテイン (γ-Sm) の比率 (PSA/γ-Smratio) を測定し, 前立腺癌 (CaP) の診断における有用性を検討した. 1988年4月から1992年10月までに前立腺生検または経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) により病理組織学的診断を行った症例のうちPSA値が10.0ng/ml以下であった157例を対象とした (no cancer (NC) 118例, CaP 39例).
    1) 血清PSA値が4.1~10.0ng/mlの症例ではγ-Sm値はCaP群の方がNC群よりも有意に低く (3.744±2.481 (mean±SD, n=27) VS. 7.573±4.182 (n=41), p<0.0001), PSA値は両群間で有意差を認めなかった. その結果PSA/γ-Sm ratio はCaP群の方がNC群よりも有意に高かった (2.181±0.802 VS. 1.095±0.804, p<0.0001),
    2) PSA値が4.0ng/ml以下の症例においてもCaP群のγ-Sm値はNC群に比べ有意に低く (1.600±0.705 (n=12) VS. 3.243±2.456 (n=77), p=0.0064), PSA値には有意差がなく, PSA/γ-Sm ratio はCaP群の方が有意に高い値を示した (1.762±0.544 VS. 0.808±0.330, p<0.0001).
    抗γ-Sm抗体は遊離型PSAのみを認識する事が明らかとなっているので, 以上の結果から血清PSA値が10.0ng/ml以下のCaP群では遊離型PSA (=γ-Sm) がNC群に比べ低下するためPSA/γ=Sm ratio が高値となる事が示唆された. その結果, 血清PSA値が10.0ng/ml以下の症例においてもPSA/γ-Sm ratio はPSA単独よりもCaPを同定するためのより良い指標となる.
  • 吉永 英俊, 平田 祐司, 藤山 千里, 市木 康久, 井口 厚司, 真崎 善二郎, 南里 和成
    1995 年 86 巻 2 号 p. 304-307
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去6年間に7例の成人巨大尿管症を経験した. 年齢は46~67歳 (平均53.7歳) で, すべて女性であった. 偶然発見例が4例あり, 残り3例はそれぞれ腎盂炎, 血尿, 嘔気嘔吐で受診した. 全例が片側性で, 左5例, 右2例であった. Pfister-Hendren の重症度分類で grade I 1例, grade II 5例, grade III 1例で, grade II以上の6例に再建術 (Tapering and Reimplantation) を行った. 尿漏などの合併症もなく, 術後平均15日目に尿管ステントは抜去した. 術後平均観察期間は25.4ヵ月で grade II の5例は著明に改善し, grade III 1例は軽度の改善に留まった. 成人の場合積極的治療の要否には議論のあるところであるが, 上記成績は再建術の有効性を示すものと考えられた.
  • 風間 泰蔵
    1995 年 86 巻 2 号 p. 308-315
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄性ラットに左腎静脈部分結紮を行うことにより実験的精索静脈瘤を作成し, その内分泌学的影響につき検討した. 部分結紮後2週, 4週目においては精巣内温度および血中LH, FSHおよびテストステロンは, 精索静脈瘤群 (以下v群) と sham operation 群 (以下s群) の間に統計学的有意差を認めなかった. しかし精巣組織の造精機能評価においては, 術後2週目よりすでに軽度の両側性の障害が認められた. 精巣より分離した Leydig 細胞を培養しそのテストステロン産生能を見たところhCG非添加時には術後2および4週目とも培養液中のテストステロン濃度には, v群とs群の間に差がなかった. しかしhCG100mIU/ml, 1,000mIU/mlを添加した場合には, 術後4週目のみにおいて, v群の左右精巣ともs群に比し有意に低いテストステロン濃度を示した (p<0.05). 術後4週目において精巣より分離した Leydig 細胞を用いて行った [125I] hCG binding assay ではv群の左右精巣ともs群の精巣に比し有意に低い値を示した. またdbc-AMP添加による培養液中へのテストステロン分泌能の検討ではv群左右精巣およびs群精巣の間には差が見られなかった. 以上の結果より, 実験的左精索静脈瘤ラットでは, Leydig 細胞におけるテストステロン産生のhCGに対する反応性が障害されることが判明し, その機序としてhCGリセプター数の低下を介するものが示唆された. また, この障害は左腎静脈結紮後4週目より出現し, 精巣の造精機能障害がそれより早く出現していたことより考えて, この Leydig 細胞機能障害が造精機能障害の原因ではないことが示唆された.
  • パラフィン包埋切片との比較
    島居 徹, 友部 光朗, 内田 克紀, 服部 一紀, 赤座 英之, 小磯 謙吉
    1995 年 86 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍13例の squash 標本に対してAgNOR染色による NOR index の検討を行った. squash 標本のAgNOR染色標本は計測が容易であり, より正確な NOR index の計測が可能であった. その理由として (1) squash による核の扁平化, 核径の拡大, (1) 凝集したAgNORドットの分散, (3) AgNORドットの位相の一致, (4) 核の切除に伴うNORドットの切除が生じないことが挙げられた. squash 標本とパラフィン標本の NOR index はおのおの6.13±1.58, 8.64±4.32で squash 標本が高値をとる傾向がみられ, 腫瘍深達度とも良好な相関が得られた. squash 標本は包埋, 薄切過程を省略でき, 短時間で結果を得ることが可能で, かつ腫瘍の生物学的悪性度をより正確に反映しうると思われ, 臨床的に有用と考えられた.
  • 和田 英樹, 佐藤 嘉一, 鈴木 伸和, 堀田 浩貴, 渋谷 秋彦, 安達 秀樹, 塚本 泰司, 熊本 悦明, 丹田 均
    1995 年 86 巻 2 号 p. 321-324
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Vacuum constriction device (VCD) は, 勃起不全に対してその原因が器質的, または機能的にかかわらず有効であるとの報告がされてきている. しかし, 陰茎血管系の障害を有する患者でどの程度有効かは, 十分な検討はされていない. そこで47例の勃起不全症例に対して, VCDの反応性とプロスタグランディンE1 (PGE1) の反応性とを比較検討した. 器質的要因が少ないと思われた勃起障害症例の20例全例がVCDにて完全勃起が得られたが, PGE1では11例 (55%) しか完全勃起が得られなかった. 器質的要因が多いと思われた勃起障害症例の27例中23例 (85%) がVCDにて完全勃起が得られたが, PGE1では9例 (33%) しか完全勃起が得られなかった. VCDに反応しなかった4例中2例は痛みのために中断した症例であり, 残る2例は陰茎動脈前腕動脈血圧比が0.65未満の症例であった. このため高度な動脈系障害を有しない症例ではVCDによる勃起反応は良効であると示唆された.
  • 高井 計弘, 小島 弘敬, 押 正也, 河邉 香月
    1995 年 86 巻 2 号 p. 325-332
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984~1986年の日赤医療センターの淋菌分離株85株について, 栄養要求型と Knapp のモノクロナール抗体法による血清型を検討した. 栄養要求型は Proto, Pro, Arg, PAUの4型が検出され, Proto型33例, Pro型33例, Arg型10例, PAU型9例で, AHU型は0例であった. 血清型はIA, IB群に分けた. 各群に対し, ペニシリン系, セフェム系, スペクチノマイシン, テトラサイクリン, ニューキノロン系など計22剤の化学療法剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を検討した.
    ニューキノロン剤ではPro型がProto型より低いMIC値を示したが, 多くの薬剤で Arg, PAU, Proto, Pro の順にMIC値は高くなった.
    また, 血清型はIA群が5例と少数であったが, 全体に各種薬剤でIB群よりも低いMIC値を示した.
    以上より, これまでアジア型でペニシリンに抵抗性を示すと報告されていたProto, Pro型が他の薬剤に対しても抵抗性を示すことが判明した. また欧米型とされていたArg, PAU型が本邦分離菌でも各々12, 11%と認められた.
  • 片側内陰部動脈塞栓術が有効であった1例
    桑原 守正, 藤崎 伸太, 中村 晃二, 大田 和道, 西谷 真明, 高木 紀人
    1995 年 86 巻 2 号 p. 333-336
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    45歳, 男性. 騎乗型会陰部打撲による球部尿道損傷後に生じた流入過剰型の持続勃起症の1例を報告する. 診断は陰茎海綿体の血液ガス所見, 陰茎海綿体造影および内陰部動脈造影より行った. 治療はまずαアドレナリン作動薬を海綿体に注入する保存療法を施行したが効果は認められなかった. そこでゼラチンを用いて片側の内陰部動脈塞栓術を行ったところ完全な弛緩が得られた. 治療後, 約2ヵ月後には勃起機能は正常に回復し, 性生活も正常となっている. 著者らの調べ得た限りでは, 外傷後に生じた流入過剰型持続勃起症に対する動脈塞栓術は欧米で18例, 本邦では2例が報告されているにすぎない.
  • 水永 光博, 森川 満, 宮田 昌伸, 金子 茂男, 八竹 直
    1995 年 86 巻 2 号 p. 337-340
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性, 切迫性尿失禁, 排尿感の消失を主訴に受診した. 通常の膀胱内圧測定では低活動膀胱の所見であり, 尿失禁に対して, 内服治療, 電気刺激療法, 手術 (膀胱頸部吊り上げ術) を行うが無効であった. 長時間連続の膀胱内圧測定を行ったところ, 無抑制収縮が頻発し精神作業負荷により無抑制収縮は消失した. 以上より精神的要因が強く関与した psychological non-neuropathic bladder と診断した. 精神科的治療により約1年半後に尿失禁は消失した.
    難治性の蓄尿排尿障害には, 本症例のごとく心因性の精神疾患が原因となっている可能性がある. このような症例の診断には通常の排尿機能検査では不十分なことがあり, 本症例では精神的, 知的作業負荷を与えながらの長時間連続膀胱内圧測定が有効であった.
  • 大野 芳正, 山内 民男, 上田 朋宏, 川上 理, 河合 恒雄, 川口 智義, 神田 浩明, 土屋 永寿
    1995 年 86 巻 2 号 p. 341-344
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性. 右上腕骨の病的骨折から腎癌を疑われ当科を初診. 右腎細胞癌 (病期IV) の診断のもとに右腎摘出術を施行した. 術後 interferon alpha を主体とした免疫療法を開始し, 膵転移, 骨転移の進行にあわせて適宜OK-432, interleukin-2, interferon gamma を追加, また骨転移巣に対し放射線療法を併用した. 治療開始後8年6ヵ月で死亡. 病理解剖により膵に腎癌転移とその周囲に悪性リンパ腫 (B細胞型) の浸潤が認められ, 腸間膜・大腿骨に悪性リンパ腫が確認された.
    文献上腎癌と悪性リンパ腫の重複例は, われわれの調べ得た限りでは本邦において4例にすぎない. これらを含めその発生を中心に若干の文献的考察を加え報告する.
feedback
Top