尿路結石症の成因に関する研究は代謝異常面から主に行われてきたが, 代謝異常だけでその成因をすべて説明することは困難である. そこで本研究では上部尿路の形態学的および尿流動態学的観点から結石成因について検討した.
形態学的研究では結石側は正常側に比べ, (1) 小腎杯 (乳頭) 数が多い, (2) 分枝数が多い, (3) 腎盂半径が長い, (4) 最下方径が長い, (5) 腎杯総面積が広い, (6) 腎盂面積が広い, (7) 総面積が広い, という結果であった.
尿流動態学的研究では結石側は正常側に比べ, (1) 蠕動頻度が少なく, 特に上部尿管では有意差を認める. (2) 蠕動間隔差が有意に大きく, 蠕動発生は不規則である. (3) 個人差が大きい, という結果であった. しかし, 収縮圧は腎盂尿管移行部を除き, 正常側と結石側に有意差はなかった. また, フロセマイド負荷により正常側, 結石側ともに収縮圧は減少し, 蠕動頻度は増加した. 蠕動間隔は結石側で著明に減少し, 不規則であった蠕動発生は規則的になった.
以上2つの研究より, 同一個人においても結石側は正常側に比べ, 尿流量や尿流速が低下し, 尿の停滞や濃縮を招き, 尿路結石を作りやすく, さらに排石に関しても好ましくない状態にあると言える. すなわち, 結石成因の1つとして, 上部尿路の形態および尿流動態の異常が考えられた. また, 水分摂取など利尿作用は代謝面だけではなく, 尿流動態の改善という点からも効果的な再発予防および排石促進法と考える.
抄録全体を表示