1995 年 86 巻 2 号 p. 337-340
症例は44歳女性, 切迫性尿失禁, 排尿感の消失を主訴に受診した. 通常の膀胱内圧測定では低活動膀胱の所見であり, 尿失禁に対して, 内服治療, 電気刺激療法, 手術 (膀胱頸部吊り上げ術) を行うが無効であった. 長時間連続の膀胱内圧測定を行ったところ, 無抑制収縮が頻発し精神作業負荷により無抑制収縮は消失した. 以上より精神的要因が強く関与した psychological non-neuropathic bladder と診断した. 精神科的治療により約1年半後に尿失禁は消失した.
難治性の蓄尿排尿障害には, 本症例のごとく心因性の精神疾患が原因となっている可能性がある. このような症例の診断には通常の排尿機能検査では不十分なことがあり, 本症例では精神的, 知的作業負荷を与えながらの長時間連続膀胱内圧測定が有効であった.