1995 年 86 巻 2 号 p. 341-344
症例は51歳男性. 右上腕骨の病的骨折から腎癌を疑われ当科を初診. 右腎細胞癌 (病期IV) の診断のもとに右腎摘出術を施行した. 術後 interferon alpha を主体とした免疫療法を開始し, 膵転移, 骨転移の進行にあわせて適宜OK-432, interleukin-2, interferon gamma を追加, また骨転移巣に対し放射線療法を併用した. 治療開始後8年6ヵ月で死亡. 病理解剖により膵に腎癌転移とその周囲に悪性リンパ腫 (B細胞型) の浸潤が認められ, 腸間膜・大腿骨に悪性リンパ腫が確認された.
文献上腎癌と悪性リンパ腫の重複例は, われわれの調べ得た限りでは本邦において4例にすぎない. これらを含めその発生を中心に若干の文献的考察を加え報告する.