日本泌尿器科学会雑誌
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DDV-L (Deep dorsal venous ligator) を用いた前立腺全摘除術の治療経験
辻畑 正雄室崎 伸和三宅 修関井 謙一郎伊東 博板谷 宏彬
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キーワード: 前立腺全摘除術, DDV-L
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1207-1213

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抄録

(背景と目的) DDV-Lを用いた前立腺全摘除術における術中出血と術後尿失禁について検討した.
(対象と方法) 1979年5月より1995年5月までに前立腺全摘除術を38例に施行し, そのうち1994年10月から1995年5月までの14例にDDV-Lを使用した.
DDV-Lは, 経尿道的に使用し, 左右の lateral pelvic fascia をみながら, deep dorsal vein complex の外側に針を出して, 一部尿道を含んだまま deep dorsal vein complex を結紮するための disposable な器具である.
(結果) DDV-Lを使用した14例と使用していない14例について比較してみると, 平均手術時間は使用群が178.6minで非使用群が188.0minであった. 平均出血量は使用群が735.7mlで, 14例中2例 (14.0%) に輸血を行っているのに対し, 非使用群は1250.2mlで, 14例中10例 (71.4%) に輸血を行った. また, pad を必要とする術後尿失禁は使用群が14例中1例 (7.1%) で, 非使用群は14例中5例 (35.7%) に認めた.
(結論) 以上よりDDV-Lを用いて手術を行った方が, 術中出血, 術後尿失禁に関して明らかに成績は良好であった.
その理由として, DDV-Lにより deep dorsal vein complex の処理を容易に行えるため, 過剰な止血や電気凝固をしないで尿道切断が可能で, しかも膜様部尿道を十分長く残すことができるためと考える.
DDV-Lは, 前立腺全摘除術において非常に有用であると考える.

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