日本泌尿器科学会雑誌
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後腹膜腔に原発したと思われる悪性中皮腫の1例
井口 靖浩東間 紘奥村 俊子高浜 素秀
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キーワード: 無機能腎, 中皮腫, 後腹膜腔
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1261-1265

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抄録

後腹膜腔から発育した悪性中皮腫の症例を報告する. 患者は39歳男性で1993年4月に右無機能腎を主訴に当科入院した. その6ヵ月前より右腰背部と陰嚢に鈍痛を自覚していたが徐々に痛みは増強した.
他院にてIVPを施行され, この時右無機能腎を指摘された. 当院にて膀胱鏡検査, 逆行性腎盂造影, 経皮的腎盂造影, CT, 超音波エコーなどを施行し後腹膜腔に原発不明の腫瘍があることが判明し, これにより右尿管は完全に閉塞されており, 右腎は無機能となっていた. 右腎摘と右尿管部分切除が施行されたが腫瘍は周囲の筋肉, 骨に浸潤しており切除不可能であった. 病理組織学的に腫瘍は悪性中皮腫であった. 術後, 化学療法を施行したが無効であった. 腫瘍は急激に成長し, 最初の手術後8ヵ月目に多臓器不全にて死亡した.
悪性中皮腫は一般に漿膜面より発生すると云われており, そのため腹膜, 胸膜原発の事が多い, しかし本症例では後腹膜腔に発育しており, 非常にめずらしい症例なので文献的考察を加えて報告する.

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