日本泌尿器科学会雑誌
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高血糖症を伴った腎細胞癌の1例
松村 剛木原 和徳後藤 修一大島 博幸
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キーワード: 高血糖, 腎細胞癌
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1258-1260

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抄録

71歳の男性. 2年前より指摘されていた高血糖が増悪し, 体重減少, 全身倦怠感, 口渇, 多飲多尿を訴えて他院を受診し, その精査中に右腎腫瘍を指摘された. 当院内科入院時, 空腹時血糖729mg/dl, 尿ケトン体陽性であったため, 血中Cペプタイド2.6ng/mlであったがインスリンの投与を開始した. 34単位/日のインスリン投与で血糖値はコントロールされ, 右腎腫瘍の治療目的で当科に転科した. 腫瘍は右腎上極にあり, 8×6×8cmの大きさであった. 1992年11月4日経腹膜的根治的右腎摘除術を施行した. 術直後より高血糖は著明に改善し, 術当日以降インスリン投与は中止した. 術後2週間で空腹時血糖110mg/dlとなり, 術後2ヵ月の75gブドウ糖負荷試験では境界型となった. 1994年4月現在, 無治療にて空腹時血糖値は正常範囲内である. 病理診断は腎細胞癌G1>>G2, pT2であった. 術前の血中グルカゴン値は正常で, 免疫組織学的に摘除標本のグルカゴンとソマトスタチンはともに陰性であったため, 高血糖の原因となる内分泌病変は解明できなかった. 原因として, 未知の腎細胞癌由来のインスリン作用阻害因子, あるいは糖新生増加因子の存在が想定された.

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