日本泌尿器科学会雑誌
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剖検例における腎腺腫と潜在性腎細胞癌の組織形態学的検討
Morphometry を利用した比較検討
橋根 勝義住吉 義光香川 征
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1996 年 87 巻 3 号 p. 667-675

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抄録

腎腺腫と潜在性腎細胞癌の相互関係を明らかにするために剖検症例を対象に病理組織学的およびモルフォメトリーによる検討を行った. 過去34年間の全剖検2,201例のうち潜在性腎上皮性腫瘍は55例 (2.5%) あり, (1) 腎腺腫, (2) 腎細胞癌, (3) 中間型に分類した. 腎腺腫は44例59病変, 潜在性腎細胞癌は7例8病変, 中間型は4例4病変認められた. 腎腺腫は, 平均腫瘍径1.9mm, 被膜を有するもの5.1%, 出血や壊死を認めたものはなかった. 一方, 潜在性腎細胞癌は平均腫瘍径15.7mmと腺腫に比べ有意に大きく (p<0.005), 被膜・出血・壊死を伴うものはそれぞれ100%, 75.0%, 37.5%で高頻度であった (p<0.005). 中間型では平均腫瘍径6.6mm, 被膜・出血を認めるものはともに50%で腺腫より高頻度であった. モルフォメトリーでは腎腺腫と潜在性腎細胞癌との間で平均核容積, nuclear roundness factor (NRF) に有意差が認められた (p<0.05). また, 腺腫と中間型ではNRFに差を認め, 中間型の核異型が強い結果であった (p<0.05). 中間型は腎腺腫と比較し, 腫瘍径, 被膜・出血の有無, NRFにおいて有意差を示し, 潜在性腎細胞癌に近い形態をとっていた. このような中間型の存在は一部の腎細胞癌において腺腫からの癌化の可能性を示唆する.

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