(背景と目的) 初回治療として内分泌療法を施行した Stage D2前立腺癌について, 治療前の背景因子および治療前後のマーカーの値と予後との関係について検討した.
(対象と方法) 1987年5月からの6年間に, 北大病院で治療した Stage D2前立腺癌34例を対象とした. 検討したパラメーターは, 背景因子として, 年齢, performance status, 組織学的異型度, 骨シンチの病変の広がり, 治療前マーカーとして, PSA, γ-Sm, PAP, PSA/γ-Sm比, 治療後マーカーとして, 6ヵ月後のPSA, γ-Sm, PAP, PSAの3ヵ月値/6ヵ月値比を用いた.
(結果) 単変量解析では, 背景因子のうち performance status (PSO vs. PS2, p=0.006, PS1 vs. PS2, p=0.016) と骨シンチの病変の広がり (p=0.004)が, 治療前マーカーのうちγ-Sm (p=0.005)が, 治療後マーカーのうちPAPの6ヵ月値 (p<0.001) とPSAの3ヵ月値/6ヵ月値比 (p<0.001) が有意に予後と相関した. 多変量解析からは, これらのパラメーターのうち, PAPの6ヵ月値とPSAの3ヵ月値/6ヵ月値比が, それぞれ24ヵ月目と36ヵ月目において一番予後を規定する因子であった.
(結論) 以上のことより, 前立腺癌 Stage D2における予後因子として, 治療前の背景因子やマーカーの値よりも, 治療後のマーカーの動きの方がより重要であることが示唆された.
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